乙武氏に負けていない? 米国でも「5人と不倫」が大騒動に世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)

» 2016年03月31日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

『ナショナル・エンクアイラー』は「スーパーマーケット・タブロイド」

 トランプも触れているが、すでに述べた通り、実のところ『ナショナル・エンクアイラー』がこれまで本物の大スクープを飛ばしてきたことはよく知られている。このタブロイド紙『ナショナル・エンクアイラー』とは、一体どんなメディアなのか。

 1926年に創刊された同紙は、ニューヨークから知名度を高めていった。1950年代からは今の形と同じ、センセーショナルなゴシップ記事を扱う新聞としてのフォーマットを完成させた。スーパーマーケットに置くスタイルを生み出し、セレブ情報からUFOといったオカルトものまでをカバーするようになる。

 ちなみに、『ナショナル・エンクアイラー』は米国で「スーパーマーケット・タブロイド」とも呼ばれている。買い物のレジに並ぶ人の目を引くために仰々しいタイトルと写真を見せて手に取らせるスタイルが定着している。発行部数は全米で50万部くらいだが、最近は出版不況やデジタル化の影響もあり、部数も落ちていると言われている。

 同紙は、70年代にはフロリダに拠点を移している。911同時多発テロの際には、炭疽菌入りの封筒が編集部に送られ、編集者1人が死亡するという痛ましい事件も起きている。筆者は以前フロリダの編集部に取材で訪れたことがあるが、大手メディアのように大きな看板が上がっているわけでもなく、真っ白な壁の地味な建物にひっそりと編集部が置かれていたのを覚えている。

 トランプは今回のクルーズの記事について、「O・Jシンプソン」や「ジョン・エドワーズ」を引き合いに出している。これらは同紙が暴露したとして伝説に残るスクープだ。元アメフト選手O・Jシンプソンの妻が殺された際、犯行を疑われたO・Jシンプソンは殺害現場に残された足跡を他人のものだと主張していたが、同紙が本人のものであると証明し裁判に大きな影響を与えた。2008年米大統領選では、民主党大統領指名候補争いをしていたジョン・エドワーズが、スタッフと不倫していたことを暴露した。がん闘病している妻と一緒に大統領を目指しているのを売りにしていただけに、その後エドワーズの政治生命が絶たれたのは言うまでもない。

『ナショナル・エンクアイラー』の表紙

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