BBCはこうした現状について、「ビルマ(ミャンマー)では人種的な暴力の波が広がっており、特にイスラム教徒に対する暴力がある。これについてどう見ているか。人によっては、これは民族浄化だという人もいる」とスーチーに質問した。するとスーチーは、「これは民族浄化ではない」と答えた上で、こう続けた。
「これは両サイドが恐怖心を持っていることに起因している。世界にはこれを分かってほしい。恐怖心はイスラム教徒の側だけにあるのではなく、仏教徒にもあるということです」
スーチーは「両成敗」とでも言いたいようだが、この主張には無理がある。キャスターは組織的に立場の弱いイスラム教徒が標的にされているという証拠があり、仏教徒による迫害ですでにイスラム教徒14万人が家を追われていると指摘。苦しみはイスラム教徒と仏教徒とで対等ではないと述べた。ちなみにキャスター自身もパキスタン系英国人女性であり、イスラム教徒でもある。するとスーチーは少し表情をゆるめ、次のように議論をすり替えている。
「非常に多くの仏教徒も、いろいろな理由で国を離れている。これは軍事独裁政権下の苦しみがもたらしたことだ」
そしてインタビューの後で、スーチーはこのキャスターの質問に憤慨し、「イスラム教徒からインタビューを受けるなんて誰からも聞いていなかったわ」と側近に怒りをぶつけたという。その話が彼女の評伝で暴露されると、メディアでは驚きと失望の声が広がった(参照リンク)。
そもそもスーチーは今のところ、ロヒンギャ族の問題にはあまり手をつけたくないようだ。事実、別の取材でも、イスラム教徒の扱いを変えるつもりはあるかと問われて、あいまいながら、そのつもりはないと答えていると報じられている。また2015年11月の総選挙勝利後も、スーチーの側近が取材に、ロヒンギャの問題は優先事項ではないと語ったことが報じられている。
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