そんな日産の未来を左右する正念場に、突如おもしろいモデルがデビューした。日産のグループ企業であるオーテックジャパンの創立30周年を記念するモデルとして発表された「マーチ・ボレロA30」である。このクルマは、日産マーチをベースに適法に改造を施し、いわゆるコンプリートカーとして販売される。注目ポイントは職人手組みのエンジンと、80ミリメートルのワイドトレッド化。クルマの走行性能を上げるのに、トレッドの拡大はてき面に効く。明らかにそういう勘所が分かった人が作ったクルマだ。乗って楽しいモノになっているだろうことは容易に想像できる。
オーテックジャパンが手掛けたマーチと言えば、好事家は2003年にデビューした「マーチ12SR」を想起するだろう。マーチ12SRはたった1200ccのエンジンとローコストの改修でクルマが信じられないほどスポーティに変わること、そして、そういうクルマがロイヤリティユーザーを熱狂させることを証明してみせた。それはオーテックジャパンのチューニングカーとしてスタートしながら、日産の正規カタログモデルに昇格したことで実証されている。マーチのスポーツモデルは、初代モデルの「マーチ・スーパーターボ」以来、日産のスポーツマインドを下支えしてきた歴史があるのだ。
しかし、マーチ・ボレロA30は、現時点ではオーテックジャパンのクルマであって日産のクルマではない。販売にしたところで4月11日から5月9日の間に同社のホームページから商談申し込みを受け付けて、抽選の上、30台のみ生産するという限定的なモデルに過ぎない。日産の国内販売のグランドデザインには現時点では微塵(みじん)も関係ないのだ。
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