実はノーベル平和賞受賞のすぐ後に予定されていたオバマの訪日に合わせて、米政権内でオバマの広島訪問が取りざたされたことがある。そして当時は見送りになったが、今回は分からないとの見方もある。
当時の顛末(てんまつ)については、内部告発サイト「ウィキリークス」が当時の外交公電を公表したことで後に話題になった。その公電は、当時のジョン・ルース駐日米国大使が、2009年11月のオバマ訪日を前にした藪中三十二外務事務次官との面談内容を本国のヒラリー・クリントン国務長官へ報告した文書だ。
そこにはこう書かれている。「彼(藪中)は、オバマ大統領が第二次世界大戦時の核兵器投下を謝罪するために広島を訪問するという考えは非現実的で、両政府とも大衆の期待を鎮めなければならないと強調した。派手ではない簡素な広島訪問で十分に正しいメッセージを送ることができるが、11月の訪日にそのスケジュールを入れるのは時期尚早だ」
この公電は米国メディアで、「米国による謝罪の考えを日本が拒否した」などと報じられて物議を醸している。米政府はウィキリークスの情報にはコメントしないとの方針だが、実際のところオバマ政権が、米国による核兵器投下に対して謝罪すると日本政府に申し出た事実はないと言われている。
原爆投下に対する謝罪の有無はまた別の重要問題として議論されるべきだが、公電から見ても分かる通り、派手ではない形で広島を訪問することを日本側も拒否はしていない。そして今回、謝罪の有無が争点にならない限り、オバマの広島訪問が実現する可能性はある。
2016年3月のキューバ訪問は、実は数年前まで、米政権内でも訪問など不可能だと認識されていた。だがそれが実現したのだから、広島だって何が起きるか分からない。しかもG7外相会議でケリー国務長官が広島の平和記念公園を訪問したことで、オバマが訪問するハードルを下げたとも見る向きもある。
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