JR北海道が断念した「ハイブリッド車体傾斜システム」に乗るまで死ねるか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/5 ページ)

» 2016年05月06日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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世界の鉄道を革新する技術

 JR北海道の285系気動車の消滅は、北海道の鉄道高速化をあきらめただけではない。日本の鉄道技術の進化を摘み取ってしまった。ハイブリッド車体傾斜システムはJR北海道と鉄道総合技術研究所と川崎重工業の共同開発だ。DMVを各地でデモンストレーションしたように、ハイブリッド車体傾斜システムを北海道以外の地域に転用したい。

 ただし、傾斜角8度は気動車だからできたこと。電車の場合は架線との調整が難しい。気動車として導入するなら、JR西日本の山陰地区やJR四国あたりだろうか。どちらも振り子式の気動車特急を走らせている。JR東海の「ひだ」「南紀」ではどうか。次の新型車両置き換えで採用していただきたい。

 さらに展望すれば、この方式は海外の鉄道高速化手段として輸出できる。世界は高速鉄道ブームで、日本、フランス、中国など各国の新幹線方式を売り込んでいる。ただし費用対効果を考えると、すべての国が必ずしも最高速度を求めているわけではない。新幹線のスピードには届かなくても、低予算で劇的なスピードアップを図れるなら歓迎する地域はある。

 積み荷の荷崩れを防止するという意味では、高速貨物鉄道にも使える。これも海外では需要がありそうだ。JR北海道がノウハウを蓄積して売り込めば、起死回生のチャンスがあった。ハイブリッド車体傾斜システムは成就させたい。このままでは技術者たちも報われない。鉄道ファンとして、日本の鉄道技術の粋に乗らずに死ねるか。

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