少年少女の模範生・二宮尊徳は世界きっての経済イノベーターだった歴ドル・小日向えりの「もしあの武将がネットサービスを使ったら……」(4/5 ページ)

» 2016年05月07日 07時15分 公開
[小日向えりITmedia]

世界初の信用組合「五常講」

 尊徳は、財政に関するコンサルティング業を進めるうちに、武家だけでなく、その下に仕える武士や農民も経済的に苦しんでいることに気付き、支援に乗り出します。

 そこで発明したのが、世界初の信用組合と言われる「五常講」です。これは皆でお金を出し合って積み立て、困った人が出るとそこから貸し出すという方法です。道徳をベースにした金融システムで、五常というのは、人として行うべき5つの道――仁(優しい心掛け)、義(正しい心)、礼(感謝の心)、智(工夫と努力の心)、信(約束を守る真心)――に由来します。

 これらの道をお互いに守れば、貸した金が戻らないことはないだろうと、貸付は無利息でした。当初は個人向けの融資でしたが、次第に拡大していき、村単位にまでなりました。世界で最初の信用組合は1864年にドイツで生まれましたが、それよりも40年以上も前のことです。

飢饉を予測

 五常講で窮乏藩士を救ったことで、藩主・大久保忠真から見込まれた尊徳。今度は、財政難に苦しむ旗本や村の復興を依頼されます。

 尊徳が藩の復興計画を立てるときには、過去数十年からときには180年もさかのぼって、収穫量の変動や人口の増減、田畑の荒れ具合などを綿密に調べたそうです。そんな尊徳の手ほどきを受けた地域は、600カ所に達したと言われています。

 ここでもいかんなく力を発揮し、次々と成果を出しました。中でも尊徳のすごさがうかがい知れるのが、1833〜39年に起きた「天保の大飢饉」のときです。

 疫病が猛威をふるい、おびただしい死者を出し、全国で数十万人が救済者になりました。そんな中、尊徳は過去の大きな飢饉の内容や周期を調べることにより、近々大飢饉が起こることをいち早く予測し、凶作に備えた施策を打ち出していました。おかげで、尊徳の指導に従った下野国・桜町の村では、一人の犠牲者も出ないで済んだのです。

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