グーグルに限らず、いまやデジタルツールを使って業務をこなす秘書は少なくないだろう。ただ、そうした中だからこそアナログの大切さをより実感するようになった人もいる。
デジタルマーケティング事業などを手掛けるメタップスの姫野絵里子さんは、8人の経営陣の秘書を担当するほか、経理や財務などの仕事もこなす。日ごろ経営陣とのコミュニケーションはメールやチャットツール「Slack」などを使ってやり取りしているが、そうしたツールだけに頼るのではなく、直接会って話すことが何よりも重要だという。
「会えば相手の表情や雰囲気を知ることができます。その上でコミュニケーションを取ることがお互いの信頼関係を生むのです」(姫野さん)
一方で、ずっとアナログなコミュニケーションを続けることで、いまや“職人芸”の域に達しているのが、『「超」整理法』シリーズなどで知られるベストセラー作家・野口悠紀雄さんの秘書、冨田順子さんだ。冨田さんは10年以上前から野口さんの秘書業務を一人で切り盛りしている。冨田さん曰く「(取材やテレビ出演の可否など)野口さんの仕事のスタンスはほぼ理解しています」とのことである。
野口さんとのコミュニケーションにメールも使うが、メモ紙を使ったやり取りも依然として多く残っているという。普段はほとんど話をせず、執筆作業に集中しているため、どうしても急ぎで伝えたいことや大事な要件があるときは、紙に青色のペンでメモ書きして、それを野口さんの視界に入るところに置く。すると、しばらくして赤色のペンで返事が来るという。これが心地よいコミュニケーションを作っているようだ。
「本人の時間を無駄にさせないように、一番やりやすいコミュニケーションを心掛けています」(冨田さん)
秘書に求められるものはさまざまだが、何よりも大切なのは、担当する相手が仕事で最大の成果を出せるようにサポートすることである。そのためには必ずしも業務の効率化だけを追いかけるのではなく、もし相手が望むなら、あえて非効率であってもアナログ作業を尊重するのも悪いことではないだろう。秘書の仕事の奥深さを知るイベントだった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング