“オヤジ”たちが今なおミニ四駆に熱狂する理由(5/6 ページ)

» 2016年05月11日 07時20分 公開
[前田靖幸ITmedia]

オモチャではない

 そんなミニ四駆ブームはどうやって生まれたのだろうか。要因を大枠で3つ挙げるとこんな具合だ。

 オモチャではない、タミヤだった。

 ミニ四駆シリーズを、最初から「このオモチャは……」などと受け手にアプローチしていたら、大人は「良くできたオモチャだ」と評価したかもしれないが、ターゲットとした小学生高学年の少年たちは「オモチャなら要らない」と呟いていただろう。子どもは“子ども然”と扱われることを嫌うのだ。

 タミヤがそれまで成人を相手に勝負してきた、成型品のクオリティ、ドライブトレインの設計精度や耐久性、競技会のレギュレーションや運営のノウハウを、レーサーミニ四駆に対してもそのまま惜しみなく注いだことは、他社との差別化を決する大きなファクターだったと考える。当時ヒット商品だった某メーカーのシリーズに、再生プラスチックを使っていた事例があるが、タミヤはそのようなことは一切しない。また、AD(広告)とパブリシティとの違いを明確にして、子どもが嫌気を起こすもう1つの要素である“お金のにおい”をさせないという点においても多分に配慮した。

コロコロコミック&小学館の学年誌

 コロコロコミックで展開される、[連載マンガ]+[ホビー]+[イベント]+[テレビ番組]の連動企画は、当時から小学生、特に中高学年のマインドをがっちりつかんでしまうある種の形(かた)がある。近年では「妖怪ウォッチ」や「ベイブレード」などがそれにあたるだろう。

 テレビ番組との連動がなくても、例えば、1982年に登場したタカラ(現:タカラトミー)の「チョロQ」も、巻頭グラフを飾り、漫画「ゼロヨンQ太」が連載され、「チョロQ公認5種競技」といったイベント展開されるなどして、爆発的なブームにつながっていった。

 また、学年誌は、文字通り小学生の学年ごとにリーチできる媒体で、当時は小学校の各教室の学級文庫にも備えられていたことがある。そのため、何といっても回読率の高さが頼もしかった。各誌とも1年間のスパンを見通した企画を作るので、例えば、季節ものの要素を入れるなど、タミヤが醸すストイックさを良い意味で和らげ、子どもたちに分かりやすく、よく親しみやすいニュアンスを伝える企画が展開できた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.