なぜ舛添都知事の説明は響かないのか(1/4 ページ)

» 2016年05月11日 07時59分 公開
[増沢隆太INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:

増沢隆太(ますざわ・りゅうた)

 RMロンドンパートナーズ(株式会社RML慶文堂)代表取締役。東京工業大学特任教授、コミュニケーション戦略家。人事コンサルタント兼大学キャリア教官兼心理カウンセラーで、東工大大学院では「コミュニケーション演習」の授業を行っているほか、企業では人材にも「戦略性」を重視する功利主義的アクティビティを提唱している。


 大名旅行と呼ばれるファーストクラス、超一流ホテルスイートルーム、そして毎週公費での湯河原別荘送迎などへの強い批判を受け、舛添都知事本人が釈明しました。しかしそれは効果があったでしょうか? ロジック頼りの、「正しい情報提供」という典型的エリート・コミュニケーションの落とし穴が見て取れます。

謝罪とロジック

 舛添氏の弁によれば、批判を受けているいずれの行動もすべて完全合法であり、都の規定も正規の承認の上で特例が認められているとのことで、少なくとも違法性や犯罪性は無さそうなことはわかります。ではこうした説明で一件落着でしょうか? 恐らく視聴者や都民で、納得した人は誰もいないことでしょう。

 舛添氏の説明は正に「説明」であって、謝罪ではありません。法的に問題ない、コンプライアンスに反しない以上、何ら責めを負う必要が無いというロジックで貫かれています。そうです、舛添氏は正しいのです。

 いきなりですが、これこそが今回の件のポイントだといえます。正しいことを言ったとしても批判が集まってしまうことが、コミュニケーションにおける一側面なのです。炎上を起こしてしまう有名人は皆このことを分かっていないとしか思えません。ロジックの正当性と謝罪は全くの別物です。

 外国語に長けた舛添氏は、欧米的なロジカルシンキングで正しい情報を正面から説明したに過ぎません。しかしそれはコミュニケーションとはいえないのです。

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