高橋利幸が「高橋名人」になった日高橋名人が語る(6/7 ページ)

» 2016年05月25日 08時00分 公開
[高橋名人ITmedia]

「ゲームは1日1時間」

 高橋名人が世間に広く知られるようになった要因はほかにもあります。それが「ゲームは1日1時間」という標語です。

 当時は、今とは比べものにならないくらい、ゲーム=悪、ゲーム=不良の遊び、といった固定観念が根強くありました。私としては、せっかくファミコンがブームとなり、一般家庭にもゲームが浸透したわけですから、かつてのアーケードゲームのように、ゲームが再び不良扱いされることがあってはならないと思っていました。

「ファミコンは健全な遊び」というイメージをアピール 「ファミコンは健全な遊び」というイメージをアピール

 そこで、こうした標語を掲げて、世のお母さんたちに健全であることをアピールするとともに、伝承遊びを取り入れました。

 昔からある指先の屈伸運動をする体操を、子どもたちが興味を持つように「ファミコン体操」と名付け、イベントの前に皆でやってみるようにしました。ぶっちゃけますが、指の体操でゲームが上手くなることはありません。しかし、その運動が脳を活発化させてくれるのです。これは子どもたちから老人にまで、簡単にできる大事な運動の1つでした。

 そうした活動をしていくことで、「ファミコンは健全な遊びなんだ」というイメージを作ることができ、また、高橋名人が、主に母親からの指示をも受けることになっていったのだと思います。

各メーカーの「名人」との違い

 私の場合、運が良かったのは、ハドソンがさまざまな活動を許可してくれたことです。

 1986年半ばからは、各ゲームメーカーが「名人」を作ってきました。しかし、彼らと私の決定的な違いは、ゲームの攻略だけをするのか、それともゲームの攻略はもちろんだけども、それ以外の子どもが体験するべく遊びや運動なども勧めていたかの違いだと思います。

 対象相手が子どもだけであれば、ゲームの攻略法を直伝するだけで正しいと思います。しかし、それだけでは、家計の番人とも言える母親の賛同を得ることはできませんからね。

 しかし何よりも、大成功した最大のポイントは、子どもたちが私をハドソンの社員だと認識していなかったことです。テレビ番組などでの自己紹介で「ハドソンの高橋です」と言っていたにもかかわらずです。私が紹介するゲームは、ハドソンタイトルに限定していましたが、子どもの勘違いが、「私が紹介するゲームは面白いんだ」というさらなる誤解を生んでいきました。

 しかし、この勘違いは、後に「逮捕された」という誤解をも広めることになるのですから、勘違いは、できるだけ早目に解消しておいた方がいいということですが……。

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