「無防備な炎上」を防ぐ「ポリティカル・コレクトネス」入門(2/2 ページ)

» 2016年05月26日 11時00分 公開
[青柳美帆子ITmedia]
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「セクハラ」「差別待遇」をチェックして炎上を防げ

 女性についての項目では、「女性に関して現在どのような人権問題が起きていると思うか」を問う世論調査の結果が分かる。

  • セクシュアル・ハラスメント(性的嫌がらせ)
  • 職場において差別待遇(女性が管理職になりにくい等)を受けること
  • ドメスティック・バイオレンス(配偶者やパートナーからの暴力)
  • 売春・買春
  • 男女の固定的な役割分担意識(「家事は女性」等)に基づく差別的取扱いを受けること
  • 「令夫人」「婦人」「未亡人」「家内」のように女性に用いられる言葉が使われること
内閣府による「人権擁護に関する世論調査」の結果

 この世論調査の結果を「気を付けるポイント」として書き換えると、以下になるだろう。

  • セクシュアル・ハラスメントに当たる表現になっていないか
  • 職場における差別待遇を肯定する表現になっていないか
  • ドメスティック・バイオレンスを肯定する表現になっていないか
  • 売春・買春を肯定する表現になっていないか
  • 男女の固定的な役割分担意識に基づく表現になっていないか
  • 「令夫人」「婦人」「未亡人」「家内」のような言葉が特別な意図もなく使われていないか

 例えば2015年3月に放送されて批判を受けた「ルミネ」のCMでは、華やかな女性社員とそうではない女性社員を比べ「“需要”が違う」「職場の華」といった表現を用いていた。言葉や企画趣旨がセクハラや職場の差別待遇と取られやすいものと気付いていれば、CMの炎上を防げた可能性がある。

 「外国人」のチェックポイントはこう考えられるだろうか。

  • 風習や習慣などの違いを否定する表現になっていないか
  • 就職・職場で不利な扱いを受けることを肯定する表現になっていないか
  • じろじろ見たり、避けたり、差別的な言動をすることを肯定した表現になっていないか
  • 職場、学校などにおける嫌がらせやいじめを肯定した表現になっていないか

 5月24日には「ヘイトスピーチの対策法(解消法)案」が可決、成立した。今後はより一層「特定の民族や国籍の人々を排斥する表現になっていないか?」という視点が重要となる。

 難しいのは、褒めていればいいというわけでもないということ。「白人は優秀」「黒人はスポーツが得意」といったステレオタイプ的な表現も疑うべきだ。

 ここまで読んできた読者の皆さんの中には、「気にしすぎだ」「言葉狩りではないか」という感想を抱いた方も多いのではないだろうか。事実、ポリコレは「表現の自由」とぶつかり得る。また、本家の欧米でも、日本でも、ポリコレに対して揶揄(やゆ)する意見は多い。

 さまざまな人に届く表現を目指せば、強い言葉が必要とされる場合もある。そのとき発言者に求められているのは、「ポリコレを順守すること」ではなく、「ポリコレには問題があるとわかった上で、その表現を世に発信すること」だ。

 「不快な思いをさせたことを謝罪して、発言を取り下げます」――といった道をたどらぬよう、ポリコレを「身を守る武器」として使ってみよう。

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