「宇宙ホテル」や「宇宙実験」、国際宇宙ステーションを起点に急増する民間サービス宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)

» 2016年05月27日 08時30分 公開
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宇宙飛行士の輸送システム

 2016年1月に発表された「CRS-2」(2019年〜2024年までの輸送契約)では、この2社に加えて米SIERRA NEVADAの補給船「Dream Chaser」も選定された。同機体はスペースシャトルのような有翼機で、元々は有人用に構想されていたこともあり、将来的には有人機に発展することも期待されている。

 また、NASAではISSへの商業有人輸送に向けた開発プログラムも進めている。現在は第4プログラムの「CCtCap」が進められており、SpaceXと米Boeingが選ばれている。2社はNASAとの間に60億ドル以上の契約を結んでおり、ISSへの輸送実証などを求められている。

微小重力実験のための実験室

 ISSを宇宙空間の実験室として活用するサービスもある。米Nanoracksは2009年創業のベンチャーで、NASAとの契約の下、微小重力実験の商業化サービスを提供している。具体的にはISS内部の与圧内実験と、船外プラットフォームを活用した曝露実験がメニューだ。宇宙空間ならではの微小重力環境や放射線環境での実験ができることが特徴だ。

 これまでに350のペイロード(積載物)を取り扱ってきており、その顧客にはNASAやESA(欧州宇宙機関)といった宇宙機関以外に、製薬企業などがいる。

 Nanoracksは独自の衛星放出機構を活用してISS日本実験棟「きぼう」のエアロックからの超小型衛星の放出も行っている。米衛星ベンチャーのPlanet Labsなども同社の放出サービスを活用しており、今年5月時点までに100機以上の超小型衛星を放出実績があるという。

 きぼうも民間利活用に力を入れている。第2回「日本ベンチャー大賞」を受賞した東京大学発のバイオベンチャー企業、ペプチドリームがきぼうでの創薬実験を行っている。また、超小型衛星放出は日本でも有償利用と教育無償利用の双方を受け付けている。日本勢の取り組みにも期待したい。

 2010年にスペースシャトル「ディスカバリー」で宇宙に行きISSに滞在した宇宙飛行士の山崎直子氏は「きぼうは日本が持つ宇宙のプラットフォーム。宇宙ビジネスの実証の場としたり、医療、ロボット、教育などのさまざまな分野と協力して新しいサービスを生み出していきたいと思います」と語る。

 ISSは、2024年までの運営に関しては各国で合意がなされている。他方でNASAは地球低軌道に関しては、民間企業による商業化を進めてきており、自らは火星探査など深宇宙へとシフトしていくことを明確にしている。今後、ISSや軌道を舞台に、どういったサービスやアイデアが民間から出てくるのか楽しみである。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。

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