高齢化時代の福祉車両池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2016年06月06日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

行政と家庭の負担分担

 特に自助生活ができなくなるケースは問題だ。「保育園落ちた日本死ね!!!」ではないが、老人介護施設が不足すれば、生産人口の足かせに直結し、ただでさえ足りない生産人口が戦力ダウンする。介護のために離職するようなケースは今後一層増えていくことはほぼ確実なのだ。しかも年数的に見れば幼児より年数が長く、先に行くほど手間がかかることになる。

 だからと言って、問題の解決をすべて行政に押し付けても改善できない。財源には限りがあるし、絶対的な人手も足りない。となれば、本人の自助努力と、家族のサポートに期待することになる。

 仮にデイサービスを拡張したような施設をある程度公的に増やしたとしても、そこまでの移動を全部施設側負担で行うのは無理だろう。容易に想像できるのは、出勤前に施設まで高齢者を送り届け、仕事が終わったら、迎えに行くというまさに保育園と同じパターンになるだろう。それ以上を家族に期待すれば介護離職をするしかなくなってしまう。現実的な範囲での落としどころは恐らくこのパターンになるはずだ。

 つまり施設の整備と、介護しながら働くための労基法の改正、そして送迎のためのより安価で効率的な道具の充実を同時に成立させて行かないと高齢化社会は破たんしてしまうのだ。

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