もう1つ、根強い人気を垣間見たのが「雪印コーヒー」だ。これについては、少し時代をさかのぼりながら話をしよう。
2000年6月、雪印乳業(現:雪印メグミルク)が食中毒事件を起こした。記憶に残っている人も多いだろう。当時、「雪印牛乳」は牛乳においてのメインブランドであり、他を寄せ付けない圧倒的なネームバリューがあった。
当然ながら、それまで牛乳の代名詞だった雪印牛乳は売り場から姿を消した。特に、コンビニのような陳列棚のスペースに限りがある店舗では多くの種類を置いていなかったので、雪印牛乳がなくなったら売るモノがない状態だった。
筆者の経験では、明治から「おいしい牛乳」が発売されるまで、牛乳全般の売り上げが落ちた記憶がある。それほどまでに雪印乳業の事件のインパクトは大きく、ブランドそのものが消滅するかとも思えた。
ところが、雪印ブランドが信用を落としたにもかかわらず、紙パック飲料のメイン商品だった雪印コーヒーの売り上げだけは変わらなかったのだ。人気が落ちなかった理由は、食中毒を起こした工場と雪印コーヒーの製造ラインとの関連性が報道初期の段階で否定されたことが功を奏したのだろう。とはいえ、当時の加熱報道ぶりを踏まえると、雪印コーヒーの売り上げが落ちなかったのは奇跡である。
ちなみに、雪印コーヒーは名前に“コーヒー”と付いているが、分類では「乳飲料」となっている。ここ数年は、オリジナルのキャラクターパッケージを展開していることからも、長期に渡る固定ファンがいることがうかがえる。
近年、スターバックスやブルーボトルコーヒーなどコーヒー専門店が次々と出店している。その一方で、飲料メーカー各社の努力によって、缶コーヒーも本格的な味わいを追求しておいしくなっているように思う。
そんな中、「MAX COFFEE」と「雪印コーヒー」は、本格派とは全くかけ離れた存在だ。この2つの「コーヒーじゃないコーヒー」は、コーヒー好きの筆者でもふとした瞬間に飲みたくなる不思議な味わいなのだ。
元コンビニ本部社員、元コンビニオーナーという異色の経歴を持つ。「タフじゃなければコンビニ経営はできない。優しくなければコンビニを経営する資格がない」を目の当たりにしてきた筆者が次に選んだ道は、他では見られないコンビニの表裏を書くこと。記事を書きながら、コンビニに関するコンサルティングをやっています。「コンビニ手稿」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング