「角栄ブーム」で得をするのは、誰なのかスピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2016年06月07日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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いったい誰が得をするのか

「角栄ブーム」で得をするのは誰なのか

 この一部メディアの「角栄ブーム」からほどなくして行われた衆院選で自民は歴史的大敗。民主党が政権を奪取した。「吉田茂ブーム」によってその血筋と国際感覚をアピールしてきた麻生さんが、「田中角栄ブーム」とともに台頭した民主党によって最高権力者の座を奪われる。そこになにかしらの「メッセージ」があるのではないかと勘ぐってしまう。もちろん、単なる偶然なのだろうが。

 そういう過去を振り返ると、夏の参院選を前に、8年ぶりの「角栄ブーム」が盛り上がりをみせているというのは非常に興味深い。

 誰が見ても、「育ちのいいお坊ちゃん」である安倍首相のイメージにマイナスにこそなれ、プラスになるわけがない。二世議員か地方の小金持ちがゴロゴロしている今の政治家の中で、角栄ほどのたたき上げは、ダンボール工場で働いて大学まで通った菅義偉官房長官くらいしかいない。

 いずれにせよ、直近の「角栄ブーム」の後に、大きな政変が起きたのはまぎもれない事実だ。この勢いなら、夏の総選挙までには『天才』も100万部を超えているかもしれない。

 今太閤ブームで、いったい誰が得をするのか。そして今度は誰が葬り去られるのか。注目したい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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