アイスクリーム市場が好調な理由は2つ挙げられる。まずは購入世代の変化だ。
「昔のアイスは『子どものおやつ』でしたが、販売戦略の成功もあり、現在のアイスは『大人向けスイーツ』に変わったのです」(アイスクリームプレスの二村英彰社長)
現在の大人(特に40代以上)が子ども時代、各地の小学校の前には駄菓子屋や小さな食品店があり、アイスは人気商品だった。だが現在はこの手の店が減り、代わって全国に5万3000店超のコンビニエンスストアがある。小銭を握りしめてアイスを買っていた子どもが、大人になって仕事帰りや休日にアイスを買うようになった――といえるかもしれない。
成人してアイスから離れた世代も、何らかのきっかけでアイス愛用者に戻るケースも目立つ。“ノスタルジー消費”ともいえるもので、象徴的なのがシニア世代である。後で紹介するが、アイスの上位商品はロングセラーブランドが多い。基本路線を踏まえつつ、〇〇味など新フレーバーを提案するのが各社の戦略だ。これがシニア層にも支持されている。
「アイスがある環境で育った団塊世代は、現役時代は仕事がらみの飲酒も多く、アイスから遠ざかった人も多かった。それが定年退職後は飲み会も減り、『スーパーやコンビニで、久しぶりにアイスを買ったらおいしかった』とリピーターになるケースも目立ちます」(同)
メーカー側も「大人」のキーワードで訴求する。例えば、江崎グリコは自社の看板ブランドで「ジャイアントコーン 大人のショコラ」「パピコ 大人のショコラ」「アイスの実 大人のカフェモカ」といった通常品よりも割高の派生商品を販売して成功した。
若い世代はどうだろう。後述するコンビニアイスの人気はすさまじく、人気商品や話題商品はSNSで拡散されて話のネタとなる。日本アイスクリーム協会の過去の調査では、「20代、30代男性が風呂上りに食べたいもの」で、ビールよりもアイスの数字が上回った。
業界団体の調査ゆえ、多少割り引く必要はあるだろうが、成人1人当たりの酒類消費量は101.8リットル(1992年度)から82.2リットル(2012年度)と20年で2割近く減り、特にビールの落ち込みが激しい(出典:2014年発表の国税庁「酒レポート」)。この数字も勘案すると、20代や30代の嗜好が変わったのは事実だろう。
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