ゴーン氏が具体的に挙げたシナジー効果は「部品購買、プラットフォーム共用、新技術の開発分担、生産拠点の共用、成長市場での協業に対してコスト低減効果がある」というものだ。
部品の購買については、典型的な「規模の経済」方式だ。電子化が進む昨今の自動車ではサプライヤーから供給を受ける部品がどんどん複雑化しており、当然価格も上がっている。これを数の原理によるバイイングパワーで押し切ろうという話だ。
プラットフォームについては上述の通りで、これまでそれぞれが負担してきた開発費用が一本化できるし、新技術の方向性では、両社とも電気自動車をターゲットとしており、これも一本化すれば開発コストが低減できる。
では生産拠点はどうだろうか? それを考えるためには地域マーケットでの販売台数をつかんでおかなくてはならない。ということで「成長市場での協業」を先に見てみよう。
ルノー・グループ(ルノー、ダチア、ルノー・サムスン)と日産自動車、三菱自動車では重視するマーケットが違うので、決算書で開示する販売台数のエリア分けが異なり、それ故に表記も異なる。例えば、ルノーの言う「ヨーロッパ」と、日産の言う「欧州」は同じエリア区分ではないから、直接の比較はできない。厳密に言えば決算期も異なるので、販売台数も時期が少しずれる。その辺は多少の誤差があるものとして、1万台以下を四捨五入した数字をざっと並べてみる。
ルノー・グループ
ヨーロッパ 145万台
ユーラシア 39万台
アフリカ/中東/インド 31万台
アジア太平洋 13万台
米国 42万台
日産自動車
日本 57万台
中国 125万台
北米 152万台
欧州(含むロシア) 75万台
その他(アジア・オセアニア/中南米/中東/アフリカ) 84万台
三菱自動車
日本 10万台
北米 14万台
欧州 20万台
アジア 32万台
各社の得意とするマーケットは、ルノーがヨーロッパ、ユーラシア、アフリカ/中東/インド。日産が北米と中国。三菱がアジアと欧州ということになるだろう。
気になるのはアジアだが、日産ははっきりと中国が中心で、三菱はアジアのうち3分の2がタイでの生産であり、それは取りも直さずASEANでの販売が中心ということになる。
つまり、欧州と北米、中国まではカバーしていたルノー・日産アライアンスは、2020年代に向けた成長マーケットであるインドとASEANへの手掛かりがつかめずにいた。しかし、今回三菱をアライアンスに組み込むことで、少なくともASEANへの橋頭堡(きょうとうほ)が築けたことになる。ルノー・グループを中心に考えれば、ルノーが強い旧西欧と併せて、傘下のダチアが東欧、ロシア、中東をカバーし、日産に北米と中国を任せる。これに三菱をASEAN担当とすることで、グローバルマーケットの各地域への布石がコンプリートすることになる。
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