山下: 一般的にメーカーというのは3年で単年度黒字、5年で累損一掃できなければ厳しいのですが、当社は7年間も赤字でした。
土肥: 「我慢強い」といった社風があるのでしょうか?
山下: 消費者に浸透するのは時間がかかるかもしれないけれど、いいモノを出せば必ず認知される――という強い思いがありました。だから我慢できたのかもしれません。
土肥: なるほど。他社の商品に比べて、こちらはたくさんの薬剤が入っている。いいモノなんだから、いつかは分かってくれると信じていたわけですね。
山下: いいモノだと信じていたのですが……。
土肥: ん?
山下: 現地で商品の開発部隊を作りました。そこでどんなことをしたのかというと、インドネシアに生息している蚊を採取して、蚊取り線香の効果を調査しました。日本の蚊を100匹、室内に離して蚊取り線香を充満させると、10分以内に半分は死んでしまうんですよね。でも、現地の蚊は違う。半分死ぬまで数時間かかる。つまり、日本の蚊と比べて、薬への耐性が5倍もあることが分かったんですよ。
土肥: なんと!
山下: 冒頭でもご紹介しましたが、それまでは薬剤を0.3%入れていましたが、「これでは効果が不十分だ」ということで、倍の0.6%にして発売することにしました。
土肥: それはいつの話ですか?
山下: 2005年ですね。
土肥: 遅っ! 1990年にインドネシアに進出してから、15年も経っているじゃないですか。それまでに「おかしいなあ。ウチの蚊取り線香効かないよ」といった話にはならなかったのですか?
山下: 当時、日本の蚊取り線香は「世界のスタンダード」と思い込んでいたので、「インドネシアでも通用する」と信じていたんですよね。でも、その考えは間違っていました。
土肥: 薬剤を倍にした商品を出したわけですが、その蚊取り線香を使うとどのような効力を発揮するのでしょうか?
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