連載
» 2016年07月07日 08時00分 UPDATE

世界を読み解くニュース・サロン:「英国のEU離脱が実現しないかもしれない」これだけの理由 (1/4)

英国の国民投票で、EU離脱派が勝利した。この結果を受け、株価と為替は乱高下したが、英国は本当に離脱するのだろうか。このままでは「離脱しない可能性もあるのでは」といった声も出ている。

[山田敏弘,ITmedia]

世界を読み解くニュース・サロン:

 今知るべき国際情勢ニュースをピックアップし、少し斜めから分かりやすく解説。国際情勢などというと堅苦しく遠い世界の出来事という印象があるが、ますますグローバル化する世界では、外交から政治、スポーツやエンタメまでが複雑に絡み合い、日本をも巻き込んだ世界秩序を形成している。

 欧州ではかつて知的な社交場を“サロン”と呼んだが、これを読めば国際ニュースを読み解くためのさまざまな側面が見えて来るサロン的なコラムを目指す。


 英国で6月23日、EUからの離脱の是非を問う国民投票が行われ、英国民の51.9%がEU離脱を支持する結果になった。

 これを受けて、世界的に政治・経済分野で動揺が広がった。英国内では、残留派の市民が街頭で抗議活動を行ったり、再投票を求める署名活動が行われた。また1週間以上が経った7月2日には、週末ということもあってロンドンで離脱派が数千人規模のデモを行い、ほぼ活動家と呼んでいいミュージシャンたちがここぞとばかりにスピーチを行うなどした。

 また国内政治でも混乱が続いた。残留派だったデービッド・キャメロン首相は10月までに辞任する意向を表明。すると離脱派の旗振り役で、離脱後の英国を率いるとみられていたボリス・ジョンソン元ロンドン市長が、実質的な次期首相選となる与党・保守党党首選に出馬しないと発表。また英国選出の欧州議会議員で離脱派の旗振り役だった英国独立党のナイジェル・ファラージ党首も、投票前の公約は間違いだったと認めた上で、党首辞任を発表した。離脱派の大物が早々に離脱の責任を放棄する形となっている。

 とにかく大きな騒動になっているこの「Brexit(ブレグジット:英国のEU離脱)」だが、実は今、EU離脱は実現しないのではないかとの声が上がっている。世界中を巻き込んでここまで大騒ぎした英国が、最終的にはEUから離脱しない可能性もあるというのである。一体どういうことなのか。

 改めて、簡単にブレグジットについておさらいしたい。そもそもこの住民投票、どうも軽いノリで始まったようである。というのも、2012年にキャメロン首相が訪問先の米シカゴから帰国する際、ウィリアム・ヘイグ外相とともに立ち寄った空港のピザ屋で、3年後の2015年に行われる予定だった総選挙の対策としてEU離脱の是非を問う住民投票をぶちあげようと決めたという。そして実際に2015年の選挙戦において、キャメロンは国民投票を公約として掲げた。

 英国は欧州懐疑主義が強いと言われてきた。ユーロ圏には参加せず(今も通貨はポンド)、国境を廃止して往来の自由を定めたシェンゲン協定にも署名していない。英国民の間では、EUが英国の政治・経済など主権を侵害しているとの批判があったり、ポーランドなど東欧のEU加盟国から英国の福祉手当を目的とした移民が増加していることなどへの不満がくすぶっていた。

 そんな感情を、キャメロンは選挙で煽(あお)ったのである。そして公約を守るために、キャメロン首相は2016年2月、国民投票を6月23日に行うと発表した。それがこんな大混乱を引き起こしているのだ。

英国内の政治が混乱している(写真はイメージです)
       1|2|3|4 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

ITmedia 総力特集