仕事は“コピー取り”でも、なぜあの人は「次のチャンス」を手にするのか新連載・結果を出す“下ごしらえ”(3/5 ページ)

» 2016年07月08日 08時00分 公開
[上阪徹ITmedia]

嫌々やっている人と、楽しんでいる人

 外国で語られている有名な話がある。

 道を歩いていると、職人がつまらなそうにレンガを積み上げていた。1つ、また1つと、けだるそうにセメントをつけてレンガを置いていく。

 「何をしているのか」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

 「レンガを積み上げているんですよ」

 少し離れた場所に目を向けると、同じ仕事をしているのとは思えないほど、いきいきしながらレンガを積み上げている職人がいた。

 重いレンガも楽しそうに運び、上に載せていく。「何をしているのか」と同じ質問をしてみると、こんな答えが返ってきた。

 「教会を造っているんです」

 目的を理解して仕事をするということの意味を、端的に表した逸話だ。外から見れば、やっていることは同じように見えても、嫌々やっている人と、楽しんでいる人がいる。目的が分かっているだけで、仕事は違うものになるのである。やる気だって、大きく変わっていくのだ。

 そして目的が分かって仕事をしているかどうかは、上司や先輩もしっかり見ていたりする。仕事のアウトプットが変わっていくからだ。

 ある大手IT企業を起業した経営者は、キャリアを大手銀行からスタートさせていた。配属が決まり、最初に先輩から命じられた仕事はコピー取りだった。見れば、フロアのあちこちで、同期の社員が同じようにコピーを頼まれている。

 みんな「なんだよ、コピー取りなんて」という表情である。コピー取りではなく、バリバリ仕事がしたいと思って銀行にやってきているのだ。「こんな作業のような仕事なんて」というわけである。

 同期の誰もがふてくされている中、後に日本有数のIT企業を立ち上げる彼は、仕事を楽しんでいた。なぜか。コピーを頼まれた先輩に、「何のためのコピーなのか」をいつも聞いていたからである。

 コピーの目的を聞くことで、それに最も合致させるコピーを取ることを心がけていた。両面コピーがいいか、縮小がいいか、ステープラーで綴じるのか……。丁寧さが重視なのか、スピードが重視なのか。

コピーの取り方ひとつとっても、今後の仕事に大きく影響する(写真はイメージです)

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