外国で語られている有名な話がある。
道を歩いていると、職人がつまらなそうにレンガを積み上げていた。1つ、また1つと、けだるそうにセメントをつけてレンガを置いていく。
「何をしているのか」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「レンガを積み上げているんですよ」
少し離れた場所に目を向けると、同じ仕事をしているのとは思えないほど、いきいきしながらレンガを積み上げている職人がいた。
重いレンガも楽しそうに運び、上に載せていく。「何をしているのか」と同じ質問をしてみると、こんな答えが返ってきた。
「教会を造っているんです」
目的を理解して仕事をするということの意味を、端的に表した逸話だ。外から見れば、やっていることは同じように見えても、嫌々やっている人と、楽しんでいる人がいる。目的が分かっているだけで、仕事は違うものになるのである。やる気だって、大きく変わっていくのだ。
そして目的が分かって仕事をしているかどうかは、上司や先輩もしっかり見ていたりする。仕事のアウトプットが変わっていくからだ。
ある大手IT企業を起業した経営者は、キャリアを大手銀行からスタートさせていた。配属が決まり、最初に先輩から命じられた仕事はコピー取りだった。見れば、フロアのあちこちで、同期の社員が同じようにコピーを頼まれている。
みんな「なんだよ、コピー取りなんて」という表情である。コピー取りではなく、バリバリ仕事がしたいと思って銀行にやってきているのだ。「こんな作業のような仕事なんて」というわけである。
同期の誰もがふてくされている中、後に日本有数のIT企業を立ち上げる彼は、仕事を楽しんでいた。なぜか。コピーを頼まれた先輩に、「何のためのコピーなのか」をいつも聞いていたからである。
コピーの目的を聞くことで、それに最も合致させるコピーを取ることを心がけていた。両面コピーがいいか、縮小がいいか、ステープラーで綴じるのか……。丁寧さが重視なのか、スピードが重視なのか。
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