年間25億ドル以上の資金流入 過熱する宇宙投資はまだ続くのか?宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)

» 2016年07月08日 10時47分 公開
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イスラエルやオーストラリアにも広がる支援

 今や米国だけではなく、各国で宇宙ベンチャーを支援するアクセレレータが登場している。今回筆者がパネルディスカッションで一緒になったのが、Space-Nest(イスラエル)の共同創業者であるオファー・ラピッド氏、Delta-V(オーストラリア)の創業者、ティム・パーソンズ氏だ。

パネルディスカッションの様子。右から2番目が筆者 パネルディスカッションの様子。右から2番目が筆者

 Space-Nestはイスラエル初の宇宙分野のアクセレレータであり、同国から優れた宇宙ベンチャーを生み出すことを目的に設立。航空宇宙大手のIAI(Israel Aerospace Industries)がバックアップしている点も注目だ。ベンチャー企業に対して、資金面に加えて、技術面や事業面での支援も行う。シーズ投資からプロトタイピングや試験など、フェーズに合せた支援を展開している。

 Delta-Vもオーストラリアで最初の宇宙アクセレレータだ。オーストラリアでは2018年までに小型衛星6基を打ち上げるプロジェクトが動いており、同社は従来の1000分の1のコストとなる衛星開発を支援している。またベンチャーに対しても独自の立ち上げプログラムを保有しており、提携先を紹介することでシリーズA投資やオペレーション支援を行っている。

 両社とも近年Space Angels Networkとパートナーシップを結び、それぞれの国の起業家と世界の投資家をつなげている。

今後の見通しは?

 このように過熱する宇宙ベンチャー企業への投資だが、今後の見通しはどうなのだろうか? この点に関しては、有力投資家の間でも見方が分かれている。

 今年4月にコロラドで開催された宇宙カンファレンス「Space Symposium」では(関連記事)、著名投資家が登壇するパネルがあったが、Space Angels Networkのマネージング・ディレクターであるチャド・アンダーソン氏は「エンジェル投資家の興味は広がっている。投資がスローダウンする兆候は見られない。2016年の第一四半期の入りは2015年を既に超えている」と発言した。

 他方で、金融サービス業務を行っている米Raymond James & Associatesでシニアバイスプレジデントを務めるクリス・クィルティ氏は、「2015年に株式公開した企業の70%が、上場当初より安い価格で株式取引されている」と発言し、これを良くない傾向であると指摘した。今後の動向を見守りたい。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。

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