「ワキ汗」ビジネスがこの1〜2年で拡大している秘密スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2016年07月12日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

新技術開発のきっかけは、NHKの有働アナ

 こうして生み出されたのが、2014年2月に発売された「Ban 汗ブロックロールオン」だ。つまり、ライオンは新技術を開発することと、実態調査を行うことで「ワキ汗」という新たなカテゴリーを創出することに成功したというわけだ。

 2015年にはライバル「8×4」も、「ワキ汗EX」というシリーズを出して追撃。新カテゴリー創出でにわかに活気付く制汗剤市場だが、メーカーのみなさんが足を向けて寝られない「大恩人」がいるのをご存じだろうか。

 NHKの有働由美子アナウンサーだ。

 覚えている方も多いかもしれないが、出演する『あさイチ』の中で本番中にワキ汗をかいていることに対して、視聴者から100通以上の苦情が届き、2011年5月には有働アナ自身が番組で謝罪をすることにまで発展。さらに、その反響を受けて、番組では「なぜか気になる ワキ汗」という特集も放映し、「ワキ汗は隠さなくてはいけない恥ずかしいものなのか」というワキ汗論争を世に巻き起こした。

 この「騒動」を受けて、ライオンではワキ汗対策の新技術を開発することになったというのは、有名な話だ。

 もちろん、ここまで注目を集めたのは有働アナだけの功績ではない。例えば、アパレル業界でも近年、新たな金脈として「ワキ汗」を打ち出している。ユニクロ、千趣会、GUNZEなどが汗取り機能付のインナーを発売。ライオン同様に「カテゴリー化」につとめている。

 ユニクロは今春、社会人1000人を対象にインナー着用に関する調査を実施し、汗で気になることとして、「におい」(59%)「服が汗で湿る」(46%)「わき汗が目立つ」(41%)の順だったとして、「社会人の汗の3大悩みの1つ」と位置付けている。また、新社会人の男女200人を対象に、「女性の先輩・上司がしていたら嫌なこと」を尋ねたところ、「わき汗をかいている」が22%に上ったという。

 さらに、忘れてはいけないのは「ワキ汗ブームの仕掛け人」ともいえる企業の存在である。

 製薬会社グラクソ・スミスクライン(GSK)だ。

 「Ban汗ブロックロールオン」が注目を集めていたまさにそのとき、GSKも20〜40歳代の女性1万8479人に「身体で悩んでいること」を尋ねた結果、約1割を占める9.7%が「わきの下の汗が多い」と回答したという調査を公表している。

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