4000万人がやって来る 外国人が驚く、インバウンド事情

TOTOが成田空港に“最新トイレ”を設置するワケ水曜インタビュー劇場(トイレ公演)(4/7 ページ)

» 2016年07月13日 06時36分 公開
[土肥義則ITmedia]

トイレが普及するのにうん十年かかる

山下: ホテルや空港といった場所で、たくさんの人にトイレを使っていただかないと、なかなか広がりません。ホテルで使っていただいた人が「以前使ったTOTOのトイレはよかったなあ。また、ちょっと使ってみたいけれど、どこにあるのかなあ」といったときに、家の近くにショールームがなければいけません。というわけで、ホテルや空港にトイレを設置しながら、代理店やショールームといった販売網を強化しなければいけません。

 ……と言葉にすると、ものすごく簡単に聞こえるかもしれませんが、ホテルなどにトイレを設置して、販売網を強化して、一般家庭に広がっていくのに、うん十年かかるんですよ。

土肥: マーケティングの教科書なんかには、単年度黒字5年、累損一掃7年などと書かれいますが、そんな期間では黒字にできない?

山下: 「すぐにトイレをつくって、すぐに売れて、すぐにボロ儲け」といったことは、絶対にないですね。先ほど工場をつくって、現地の人に働いてもらって……といった話をしましたが、地元の人にブランドを覚えていただくのは10年後、20年後になるかもしれません。ただ、家を購入したときに「トイレをどれにしようかな」と考えたときに「TOTOにしよう」と決めていただければ、このビジネスは長く続くんですよね。

土肥: 現地に進出して、「まずホテルや空港などにトイレを設置する」とおっしゃいました。ということは、成田空港に体験型のトイレを設置したのも、外国でやっていることと同じように認知拡大を狙っているわけですね。

山下: はい。帰国する前に、空港でトイレを使っていただくと記憶に残りやすいかなあと。

土肥: ふむふむ。でも、それってヒット率がものすごく低くないですか。まず、トイレを使ってもらわなければいけない。そして、このトイレはいいなあと思って、メーカー名を見てもらわなければいけない。さらに、それを覚えてもらわなければいけません。10年後、20年後、30年後にトイレを購入するときに名前を憶えている人ってどのくらいいるのでしょうか。「そーいえば、成田空港で使っていたトイレは……えーと、どこだったけな」という人はまだましで、ほとんどの人は帰国したら忘れているのではないでしょうか。トイレを使ったことすら忘れているかもしれません。

山下: ご指摘のとおり、確率はかなり低いですが、10年後、20年後にトイレを買い替えようとなったときに選んでもらえるようにしなければいけません。そのために、1人でも多くの人に使っていただかなければいけません。

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