4000万人がやって来る 外国人が驚く、インバウンド事情

TOTOが成田空港に“最新トイレ”を設置するワケ水曜インタビュー劇場(トイレ公演)(7/7 ページ)

» 2016年07月13日 06時36分 公開
[土肥義則ITmedia]
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過去があるから現在がある

土肥: 海外展開する上で大変なことは何でしょうか?

山下: やはり、現地の人たちが、私たちのことを「知らない」ことですね。繰り返しになりますが、まずホテルや空港など人の多いところに、トイレを設置します。でも、便器の価格は高い。ウォシュレットの価格も高い。「いいモノかもしれないけれど、いま必要ではないなあ」と思われる方がいらっしゃる。必要性を感じていただかなければ、トイレってなかなか普及しません。

土肥: 普及させるために、地道な活動を続けているわけですね。公共の場でトイレの設置数を増やしながら、販売網を増やして、1人でも多くの人に体験してもらう。

山下: はい。中国に進出した当時の人間に話を聞いたところ、当時は「“わらにもすがる”思いで、営業活動を続けていた」と言っていました。商慣習がよく分からないので、とりあえずカタログだけは持って販売網を広げようとしたのですが、簡単にうまくはいきません。聞いたこともない会社の人間がいきなりやって来ても、すぐに信頼していただけませんよね。では、どうしたのか。何度も何度も足を運びました。

 門前払いを何度も経験していたのですが、やがて「話を聞こうか」と言っていただける販売店さんが出てきました。そして「私たちはTOTOという会社の人間でして……」と言って、ようやく手に持っていたカタログを広げることができました。最先端のマーケティングを駆使して……といった世界ではありません。

 このように少しずつ人間関係を構築していくと、やがて情報が入ってくるようになってきました。例えば「あそこに新しいビルが建つぞ」といった感じで。そうしたちょっとした情報をきっかけに、ビジネスを少しずつ広げていくことができました。

土肥: 現在中国で活躍されている人の中には、このような人がいるかも。売り上げをどんどん伸ばしているので、「ふふふ、これはオレさまの実力」と天狗になっている人が。でも、過去に先輩たちがどのようなことをやってきたのかを忘れてはいけませんよね。地道に人間関係を構築してきたからこそ、いまは「まいどーTOTOです♪」と言って、会いたい人に会えるわけですから。

山下: はい。過去があるから現在がある――。このことを忘れてはいけません。

(終わり)

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