近年、欧州を中心にベーシック・インカムの議論は盛り上がり始めており、オランダでは一部の都市が実験の準備を進め、フィンランドも調査に乗り出すとのこと。カナダのオンタリオ州でも、年内にベーシック・インカムの導入実験をすると報じられている。特に、北欧では貧困対策と社会保障の在り方を財政だけでなく、人権・人道の問題として捉える傾向が強いことも影響しているとみられる。
最低生活保障を制度として導入すれば、複雑に入り組んだ社会保障と福祉制度を簡素化することができ、行政効率を大幅に改善する効果は期待できるが、一方でばらまき政策に陥ることや、「国が社会主義へと傾くのでは?」と、抵抗感を持つ人も多いだろう。現に、資本主義国でベーシック・インカムが本格的に導入された事例はまだなく、プラスの効果だけでなく副作用も未知数の部分が多いのが現状だ。
スイス国民投票の提案は、最低生活保障についての議論を促す効果は大いにあったと言えるだろう。しかし、財源確保をどうするのか、スイスの人口の約25%を占める外国人にも支給資格を与えるかどうかといった、いくつかの問題を曖昧にしたまま提出された。
有権者10万人の署名があれば、政府や議会が反対の姿勢でも国民からの提案を投票にはかる制度があるスイスならではの事例かもしれないが、日本でもベーシック・インカムについて広く議論されることを期待したい。
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