大塚親子は誰と、そして何を闘っているのか(4/4 ページ)

» 2016年07月14日 07時21分 公開
[日沖博道INSIGHT NOW!]
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 この業績の落ち込みを見て、手のひらを反すように久美子氏の経営手腕に疑問を投げかけるマスコミ論調も目につくが、何を見ているのかと思う。むしろ巧妙な広報・広告宣伝手法で騒動に伴う客離れを回避し、新たな客寄せに成功し、本来なら大幅に生じるはずの落ち込みを少なくしたと評価すべきなのだ。

 小生も先の記事で指摘したように、これほど大胆な方針転換をすればもともと持つ自らの強みを生かせず、しかもすぐには社員がついてこれず、混乱が生じるのは理の当然だ。しかも直接の競争相手は低価格路線で名をはせるイケアであり、ニトリなのだ。当面の苦戦は必然的な生みの苦しみであり、久美子氏には実は想定内のはずだ。

 販売員が「新しい接客法に慣れていない」ため、戸惑っているという現実は大塚家具自身が認めている。ぴったりと客に寄り添う従来の接客スタイルから、まずは自由に見てもらうためにタイミングを見て客に声を掛けるというのは(ファッション店などでは当たり前といえど)意外と難しいものだ。冷やかしだけの客と、本当に買う気で品定めしている客の見極めも必要だ。

 それに久美子氏の方針転換に反発して勝久氏の下に走った、己の販売スキルに自信がある優秀な販売員が抜けた影響も小さくないはずだ。大塚家具の広報アナウンスでは決して触れられない側面だが、久美子氏には痛手だったろうし、勝久氏には「してやったり」だろう。

 こう考えると、この2人の経営者は、確かに骨肉の争いのかっこうではあるが、互いの戦略方針の正しさを証明するため、そして己のプライドを賭けて闘っているのである。そして冷静に言ってしまえば、大塚家具と匠大塚の2社は全く違う客層を相手にしようとしているゆえ、もはや「競合」でも何でもないのだ。(日沖博道)

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