どのようにして開発したのか? G-SHOCKとPRO TREKに搭載されている「磁気センサー」カシオ開発者に聞く(1/2 ページ)

カシオの腕時計「G-SHOCK」と「PRO TREK」に最新の「磁気センサー」を搭載したモデルが登場した。タフな環境の中でも、方位計を正確に使いたい。そのようなニーズに応えるために、カシオの開発陣はどのような工夫を凝らしたのか。話を聞いた。

» 2016年08月05日 10時00分 公開
[甲斐寿憲PR/ITmedia]
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 カシオの腕時計「G-SHOCK」と「PRO TREK」に最新のセンサー技術を搭載した3つのモデルが登場した。アラフォー、アラサーの男性にとってG-SHOCKは特別な存在だ。1990年代、人気モデルの発売日には購入抽選待ちの列に並んだ人も少なくないだろう。そんな人気のG-SHOCKの中でもひときわ人気の高かったモデルが「FROGMAN(フロッグマン)」だ。

新センサーを搭載したFROGMANが登場した

 G-SHOCKの中でもさらに過酷な状況に耐え得るタフな機能を強化したモデル「Master of G」シリーズ。その中でISO規格準拠200メートル潜水用防水性能を持ったダイバーズモデルがFROGMANだ。左右非対称のデザインで、横に向けるとその名の通り蛙の顔のように見える。

 今回、このFROGMANの最新モデル「GWF-D1000」、同じくG-SHOCKの海洋コンセプトモデル「GULFMASTER(ガルフマスター)」の「GWN-Q1000」、アウトドアウォッチ「PRO TREK」の最新モデル「PRW-7000」についてカシオ開発陣の方々にお話をうかがうことになった。この3モデルに共通する「センサーシステム」を中心に、プロスペックの高性能ウォッチ3機種について非常に興味深い話を聞くことができた。

腕時計という制約の中に凝縮された高度な磁気センサー

タフなシーンでも十分に使いこなすことができるFROGMAN

 今回の3モデルに共通するのは、カシオで開発された新しい磁気センサーが採用されていることだ。

 「従来の方位計は水平を保って測っていましたが、レスキューダイバーの皆さんに意見を聞いたところ水中で水平を保つのが難しいということが分かりました。『じゃあ水平を保たなくても、方位を測れるモノをつくろう』ということになり、自動水平補正付きの方位計を開発することになりました」と語るのはモジュール企画室の牛山和人チーフ。

 「時計は金属でできているので、磁気によって時計の中の金属が磁石になってしまうと正確な方位が計測できない。その磁石の影響をキャンセルする補正の仕組みがPRO TREKには備わっていますが、これまでは、時計を水平に保ちながら複雑な動作が必要でした。よりユーザーにとって使い勝手の良い製品であるために、スマートフォンでは一般的である、8の字に回転させるだけの簡単な補正の仕組みができないかと考えました」(牛山氏)

 この2つのテーマを実現するために開発されたのがFROGMAN GWF-D1000。そしてこのFROGMANと同じセンサーシステムを使って開発されたのがGULFMASTER GWN-Q1000とPRO TREK PRW-7000という2つのモデルである。

 「メーカーとの技術開発でセンサーは小型化してます。しかし、消費可能な電流もスペースも小さな時計に組み込んで、さらに高性能でかつ高い防水性能を実現するのが大変なんです」と話してくれたのはモジュール開発部第一開発室の山崎晋氏。

 「繰り返しになりますが、これまでの方位計は水平を保たないと正確に測れませんでした。今回は、センサーの傾きを測るための加速度センサーに非常に低消費でかつ高性能なモノを採用することができました。また、時計のマイコンの能力が進化し、高速のCLK動作が可能になったことで、より短い時間で高度な演算が行えるようになりました。

 この2つの要素に加え、演算処理量を最適化したアルゴリズムを新開発することで、新しいセンサーシステムを開発することができました」(山崎氏)

PRO TREKの最新モデルにも高度な磁気センサーが搭載されている

 次に、開発秘話を話してくれたのは、ソフト開発に関わるモジュール開発部第二開発室の大村竜義氏。

 「今回新たに採用した8の字補正を実行する際、複数の方位センサデータを取得して補正するデータをつくり上げなければいけません。通常の方位計測モードなら1秒間に2回くらいなのですが、補正時のソフト処理を最適化することで、今回は1秒間に6〜7回の方位センサデータを取得するレベルに仕上げることができました。これにより、FROGMANの8の字補正は2〜3秒で補正が完了するように仕上がっています」

 方位センサーの8の字補正は簡単な仕組みに感じられるかもしれないが、製品化に至るまで試行錯誤を繰り返した。

 「8の字補正の開発は苦労したのですが、実は、FROGMAN GWF-D1000の水深計測モード内で方位を測る動作制御も大変でした。水深計測モードでは1秒に1回水深値と、温度値を取らないといけません。またユーザー操作により、方位も測る動作になった際は水深値を取りながら方位の計測も行わなければいけません。こうした複数種類の計測データの取得を1秒以内に終わらせることが課題でしたが、ソフト処理とマイコン動作の最適化によって、1秒以内に水深値をとり、温度値もとり、加速度センサーと方位センサーを動かし方位値もとる動作制御を実現してます。低消費な時計マイコンで実現させるといった点で

難易度が高かったです」(大村氏)

 「スマートフォンなどと比べると、時計はローテクノロジー」と思っている人も多いかもしれないが、FROGMANはハイテクノロジーの塊だと言っていいだろう。そしてFROGMANの技術がフィードバックされた製品がGULFMASTER GWN-Q1000とPRO TREK PRW-7000の2つのモデルなのだ。

 次に、新製品3モデルをご紹介しよう。

磁気センサーを開発した山崎晋氏(左)、大村竜義氏(中)、牛山和人氏(右)
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提供:カシオ計算機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2016年9月4日

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