4000万人がやって来る 外国人が驚く、インバウンド事情

インバウンドで一番困っているのは日本のビジネスパーソン? ホテル不足を解消する“ビジネス民泊”(3/4 ページ)

» 2016年08月08日 06時00分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

合法にこだわるSTAY JAPAN

 ……と、聞くと、「自分もいっちょビジネス民泊をやってみようか」と思う人もいるかもしれない。しかし要注意。きちんと勉強しないで民泊ビジネスに参入すると、「法律違反」になる可能性がある。

 本来、宿泊業を営む場合、旅館業法の営業許可を取得しなくてはならない。しかし現状は多くの民泊が違法状態にある。旅館業法の簡易宿所の許可を取るか、国家戦略特区民泊の認定を取らなければ、クリーンな営業にはならないのだ。

 STAY JAPANのビジネス民泊は、主に特区民泊の認定を取った物件だ。現在特区民泊の実施可能エリアは東京都大田区や大阪府の一部地域のみなので、ビジネス民泊の物件もその地域に限られる。今後10月より大阪市での特区民泊の開始が予定されている。

 また、許可の条件に「6泊7日以上」というものがあるので、2〜3日の出張では利用できない。

 正直なところ、民泊ビジネスを“合法”で行うには、さまざまな制約がある。そんな中で、STAY JAPANは“合法”を前面に押し出しているサービスだ。プラットフォーム上で部屋を登録・公開するには、旅館業法や自治体からの許可証を提出する必要がある。合法にこだわったのはなぜか――と尋ねたところ、「普通に考えて、当たり前といえば当たり前」という答えがあっさりと返ってきた。

 「民泊を事業として運営するには、特区など一部の地域を除いて旅館業法の範囲内になる。現行法では許可を得ていないものは完全ブラックだ。『捕まらないからいいや』というわけにはいかない」

 三口さんは「本来民泊は良いもの。ただし、ルールを整備していく必要がある」と考えている。「ブラックな部分に手を出しながら『規制緩和してくれ』と言っても説得力がない。現在のルールを守った上で提言していくことが重要」と語る。

民泊仲介プラットフォーム「STAY JAPAN」を立ち上げた、とまれる代表取締役の三口聡之介さん

 民泊の多くはまだ違法物件が多く、登録できる物件を合法に絞ると、なかなか登録数が伸びず、プラットフォーム運営のノウハウが蓄積されにくいのは事実だ。三口さんが懸念しているのが、法整備が現状の違法状態を追認する形で行われること。「やったもん勝ちになってしまうと……」と目を伏せる。

 しかしその一方で、今この段階で合法にこだわることで生まれた効果もある。

 「コンプライアンスを重視している企業と一緒に組むことができたのは大きい。企業側も民泊に魅力を感じているが、調べていくと違法物件を扱っているケースが多く『これでは一緒に仕事はできない……』となることも多かった。当社は完全合法をしっかりと表明しているので安心していただいている」

 とまれるは今年4月、クールジャパン機構、京王電鉄などから総額約14億円の資金を調達している。部屋の利用もビジネス民泊では大手企業からの予約が多く、安定した部屋の稼働にもつながっている。

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