一方、ボルボである。ボルボでは既にレストア作業の受付を始めている。現在はボルボ東名横浜にクラッシック・ガレージを設立して、受付拠点としているが、将来的にこれを拡大し、拠点数を増やしていくとのことだ。
マネージャーの阿部昭男氏に詳細を尋ねてみた。対象は特に限らないが、やはり要望が多いのは240と850、940だそうで、これらの外装に関する部分、モールや灯火類には既に欠品部品が出ているのだそうだ。クラシック・ガレージではこれらの部品は社外部品を用いた修理ができる。しかし社外部品を使うとメーカー保証の対象外になってしまう。その辺りをしっかり説明しながら入念な打ち合わせで作業内容を決めていくのだという。
そのほかにステアリングギヤボックスなども欠品が出ているのだそうだが、これは中古部品を分解整備したリビルド品を使うことで修理が可能だという。ボルボでも顧客の要望が多ければ、レストアのパッケージプログラム化は検討したいという。筆者が心配したのは850あたりのCPU回りだ。1990年代の欧州車の最大の泣き所はコンピューター系で、いまさら8ビットのチップを作ってくれるところがなく、修理が効かないことが多いのだ。ところが、ボルボはまだ十分に純正部品で対応できるのだそうだ。
実のところ、本当のレストアというのは非常にハードルが高い。今から15年ほど前にベンツのオールドタイマーセンターを取材した際に聞いて驚いた話なのだが、本来のレストアとは、クルマを分解して劣化、損傷している部品を全て交換することである。使える部品を再利用するのは通常の修理の範疇(はんちゅう)であり、レストアとは、美観も含めて完全でない部品は全部変える作業だ。だから、いくら掛かるかは作業が終わってみないと分からない。予算いくら以内でレストアしてくれというのはレストアではないのだという。ちなみにオールドタイマーセンターでは中古車をベースにレストア済みの完成車も扱っていたが、お値段は190SLベースで約2000万円だったと記憶している。
そんな話を阿部氏にしたところ「あそこはオリジナルの設計図を持っているので、ねじ一本まで全部作れてしまいますから」とのこと、そういう本当のレストアのありかたを分かっている人がいるというのは非常に心強い。現状、ボルボではもう少しカジュアルな意味でレストアを行っており、普通の修理だが、たまたまクルマが古いというケースでもちゃんと受け付けてくれる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング