会社は“何のため”にあるのか「売れる商品」の原動力(1/4 ページ)

» 2016年08月16日 05時30分 公開
[井尻雄久ITmedia]

集中連載:「売れる商品」の原動力

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この連載は、書籍『「売れる商品」の原動力―インナーブランディングの思想』(論創社)から一部抜粋、再編集したものです。

元電通社員として、数多くの新商品の開発・事業戦略の構築に関わった著者が、キーワード“誇りと愛着”を駆使して、ジェクトワン・ニビシ醤油・伊那食品など成功企業の秘密を解明。

企業や地域といった組織が、永続的な発展に向けて取り組むべきことを分かりやすく紹介します。


会社は“何のため”にあるのか

 日本は既に少子高齢化の時代に突入しており、国内マーケットは今後ますます小さくなっていきます。それで海外に出ていく企業も多いのですが、海外でも国内と同じような競争にさらされている。インドや中国にマーケットを伸ばそうとすれば、そこに設備投資もしなければならないし、人員も確保しなければなりません。そしてまた弱肉強食の、生き馬の眼を抜くような過酷な競争を繰り返しているのです。

 うまくいく場合もあれば、国内よりももっと激しい競争になって、早々に撤退を余儀なくされている企業もあります。どちらにしても、こういうことを繰り返すだけでは、疲弊し、やがて行き詰まり、働く人が決して幸せにはなれないだろうことは目に見えています。

 そもそも、会社はなんのためにあるのか。それは、経営者もそこで働く人たちも、お互いが幸せになるためにあるはずです。さらに言えば、企業はそれぞれの役割りにおいて、社会を幸せにするからこそ存在する意義があるはずです。

 18世紀半ばから19世紀の産業革命を経て、20世紀の世界は人類史上かつてなかった大きな繁栄を遂げました。しかし結果としてそこに生じているのは「競争のための人間」「企業の利益のための人間」「社会のための人間」という姿です。いつしか人が“目的”ではなく“手段”になっているのです。それがどれほど殺伐荒涼とした光景を作り出しているか、今さら説明するまでもないでしょう。

 企業とは本来、そこで働く人、顧客、取引先はもちろん、広く社会のための公共的な存在のはずです。経営者だけのためのものでも、株主だけのためのものでもありません。

 2010年代も後半に入った今、企業の在り方、社会の在り方も、“競争の中で生き残る”ためではなく“社員と会社がお互いに幸せである状況”を作っていくため、と根本的に転換するべき段階を迎えていると思います。

 人が経済活動の手段になっている本末転倒を脱出し、「幸せのための働き方」「人のための企業」「人のための社会」という、本来あるべき形に転換していくことが、21世紀の新しい社会の在り方であり、「企業の在り方」だと私は思っているのです。

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