会社は“何のため”にあるのか「売れる商品」の原動力(3/4 ページ)

» 2016年08月16日 05時30分 公開
[井尻雄久ITmedia]

選ばれるブランドになる

 ところで、私たちが日常的に行っている「商品を買う」という行為、また、いくつかの選択肢から「商品を選ぶ」という行為は、どういう行為なのか。ここで改めて考えてみたいと思います。

 お金を出して何かを買うという行為は、あえて言えば「将来、自分の身に訪れる幸せな時間への投資」です。つまり、自動販売機にお金を入れてドリンクを買うのは、何十秒か後にのどを潤してリフレッシュする時のための投資であり、車を購入するのは数週間後に訪れる便利な生活への投資ということが言えます。

 食材を買うのも、本を買うのも、音楽をダウンロードするのも、家を購入するのも、お金を払って「商品を買う」というのは、それが数分後か数時間後か、はたまた数年後に訪れる「幸せな時間」のための先行投資をしている行為なのです。

 それでは、幾つかある選択肢の中から一つの「商品を選ぶ」という行為は、どのようなことでしょう。それは、その選択肢の中から、「自分が最も幸せになれそうなものを決める」という行為だと考えられます。

 例えば、ペットボトルの飲料水を買おうとしたとき、同じ内容量で同じ価格の「水」が3種類、並んでいたとします。3種類はそれぞれ別のメーカーのものだとして、あなたはその中から1つを選択するわけです。なぜ、その商品を選んだのか。3つの中で一番幸せな気分になれそうだからその商品を選んだ、ということになると思います。

 では、どういったことから「最も幸せになれそう」と、私たちは判断しているのでしょう。それは、「過去の経験」です。過去に幸せな気分にしてくれた経験が、その商品を選ぶという行為にさせているのです。その「過去の経験」とは、同じ商品を過去に利用した経験や、そのメーカーが出している他の商品を利用した経験、または、その商品の広告を通じて受けた印象などです。あるいは商品を購入する直近の“経験”で言えば、パッケージを見た印象ということも、それにあたるでしょう。

 いずれにしても、私たちは「過去の経験」を通して、幸せな気分をもたらした商品やその企業の商品を選ぶ行為をしているのです。

 そうした観点からも、ブランドとは“人を幸せにする存在”ということが出来ます。

誰からも選ばれない存在になってしまったら、それはブランドとは言えなくなってしまいます。

 ただし一方で、幸せを感じるポイントは人によって異なります。ある人にとってはAという商品が幸せを感じる。別の人にとってはBの商品に幸せを感じる。論理的には100%の支持を受けるブランドになることを目指しても、それは不可能です。むしろ1人でも多くの人に「幸せ」を実感していただき、できるだけ多くの人に喜んでもらえるブランドを目指すべきでしょう。

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