会社は“何のため”にあるのか「売れる商品」の原動力(4/4 ページ)

» 2016年08月16日 05時30分 公開
[井尻雄久ITmedia]
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「誇り」と「愛着」を生み出すインナーブランディング

 事業が継続的に発展し続けるための原動力とは何か。それは、経営者そして社員が抱く自社への「誇り」と「愛着」です。気合いを入れるとか、やる気を出すとかいう、曖昧な精神論ではなく、「誇り」と「愛着」から生まれる内発的なモチベーションです。

 この具体的実践が、私が本連載で語ろうとしている「インナーブランディング」なのです。

 前述したように、人が何かを買うというのは、それによって幸せになれる、あるいは幸せになれそうな気がするから行う行為です。過去とは比べものにならないほど情報が氾濫する時代になって、今や人々は情報を探すことよりも遮断していくことにウエイトを置いています。

 そこで人々のアンテナが向くようになってきた先は、心の機微だと私は思っています。単により多くのモノ、より新しいモノを所有したがってきた時代は終わり、自分を「幸せ」にしてくれるモノやコトに、人々の関心は向かっています。

 その人々を幸せにする商品を世の中に出すためには、その商品に関わっている人、その会社で働いている人が幸せを実感できていなければなりません。作っている人、売っている人、送り出している側の人が幸福でなくて、それを買う人が幸福になれるはずがないのです。

 「インナーブランディング」という言葉そのものは、「アウターブランディング」の対義語として一般的にも使われ始めています。ただ私は、その画竜点睛(がりょうてんせい)を決めるものとして「幸福感」ということを定義しています。ここが抜け落ちてしまうと、なんのための企業なのかが分からなくなってしまうからです。

 他との差別化を図るといったようなブランディングではない。その企業や地域に内在する「独自性(=らしさ)」を発見し、その「独自性」をすべての事業活動を貫く基軸にしていくこと。これこそが事業の持続的な発展につながるのです。

 そのために具体的にどのような取り組みをしていくべきなのか。次回以降、これを詳しく説明していきたいと思います。「インナーブランディング」こそがブランディングの本質であり、新しい時代の“人と社会の幸福”に直結することを、本連載で明らかにしていきます。その作業なくしては、売れる商品は生まれないのです。

(つづく)

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