ブランド成長の源は「独自性」を磨くこと「売れる商品」の原動力(2/5 ページ)

» 2016年08月18日 05時30分 公開
[井尻雄久ITmedia]

“何のため”の、ど真ん中にくるもの

 少し頭の中を整理しましょう。企業であれ、商品であれ、地域であれ、成長し発展するためには、常に未来に向かって「こうなりたい」「こうあるべきだ」という“ビジョン”を明確に描くことが必要です。一方で、それは売り上げや利益というような単なる数字であってはいけません。数字を追い求めることが第一になると“無理をするスパイラル”が生じやすく、そうなると関わる人々の情熱の総量が高まるどころか下がってしまいます。

 ビジョンとして未来に向かって掲げるべきものは、“何のため”という自分たちの存在理由、自分たちの使命の実現であり、本来の独自性を力に変えていくことです。自分たちが本来持っているもの、一番大事にしているものを磨きあげていく。そのことに、自分たちが最大の喜びとモチベーションを感じ、お客さまを含めて、関わるすべての人の情熱を高めていく。これが「ブランドの力」になります。

 つまり、ブランドとして「独自性」を磨きあげていくことは、“してもしなくてもいいこと”ではなく、前に進むために不可欠なことなのです。時代の変化の激流に飲み込まれることなく、着実に成長し発展するためには、「らしさ」を発見し、それを月々日々に磨きあげていくことが大切です。「独自性」こそが成長の源泉なのです。

 そして、ビジョンの第一に置くべき“何のため”の、そのど真ん中にあるべきものこそ“社員と会社がお互いに幸せである状況”です。

 この“幸せ”の内実については後ほど詳しく考えたいと思いますが、しかしハッキリ言えるのは、株価の上昇やマーケットの中の順位のために会社があるのではないということです。経営者も社員も人です。百年に満たない限られた人生の時間を生きている人です。

 人は誰もが“幸せ”になるために生きています。「この会社を作って、不幸な人生をめざそう」と思う創業者もいなければ、「この会社の利益を上げるために自分は不幸になろう」と決意して入社してくる人もいません。

 働いている人が“幸せ”を感じられないような企業が、お客さまを“幸せ”にできたり、社会をより良くできるはずがないのです。働いても働いても経営者も社員も心が満たされない会社が、20年、30年と発展を遂げられるわけがないのです。

 「誰のために、この会社はあるのか」「社会の中で、誰に喜んでもらうためにこの会社を作ったのか」と問うならば、なによりも経営者自身が“幸せ”になるためであり、共に働いてくださっている人すべてが“幸せ”になるためでしょう。結果的にお客さまや社会に喜んでもらう会社になるためには、ここが明確に最上位に置かれていなければならないと思います。

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