この連載は、書籍『「売れる商品」の原動力―インナーブランディングの思想』(論創社)から一部抜粋、再編集したものです。
元電通社員として、数多くの新商品の開発・事業戦略の構築に関わった著者が、キーワード“誇りと愛着”を駆使して、ジェクトワン・ニビシ醤油・伊那食品など成功企業の秘密を解明。
企業や地域といった組織が、永続的な発展に向けて取り組むべきことを分かりやすく紹介します。
経営ビジョンを、関わるすべての人が共有するにはどうすればいいか。私自身が関わらせていただいた二つの事例からご紹介しましょう。一つは、私が広告会社にいた当時に関わらせていただいたセブン-イレブン・ジャパンの取り組みです。
セブン-イレブンは、国内最大の1万8000を超す店舗数(2016年3月時点)を持つコンビニエンスストアで、その数はチェーンストアとしても今や世界最大です。しかも、全店舗の平均日販額でも他社を大きく引き離してトップを走っています。この会社のブランディングをお手伝いさせていただいた経験は、私にとっても大きな財産となりました。
同社の生みの親である鈴木敏文会長(CEO)は、早くから「コンビニは価値の高い商品を提供し続けなければならない」という考えを持たれていました。せっかくお客さまに買っていただくなら“一番いいものを提供する小売りであるべき”という理念です。
そして2010年の春から、セブン-イレブンは、アート・ディレクターの佐藤可士和氏を迎えて、新たなブランディングに取り組んだのです。佐藤氏は、ユニクロ、楽天、ホンダ、ヤンマー、キリンビール、TSUTAYAなどのブランディングを手掛けられてきた、日本を代表するアート・ディレクターです。
何十回ものミーティングを繰り返し、佐藤可士和氏の手によるセブンプレミアム、セブンゴールドなどの新しいロゴマークとパッケージをそろえた「セブン-イレブン・ブランディングプロジェクト」の発表会が開かれたのは、あの東日本大震災をへた2011年5月末のことでした。
図らずもあの大震災は、私たちの社会にとってコンビニというものが、もはや“ライフライン”そのものであるということを浮き彫りにしました。コンビニが日本社会に進出し定着しつつあったかつての時期と比べると、人々の暮らし方、働き方も大きく変化し、消費者がコンビニに求めるものも当然ながら変わってきているわけです。
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