ブランドは誰をどう喜ばせるのか「売れる商品」の原動力(4/5 ページ)

» 2016年08月23日 05時30分 公開
[井尻雄久ITmedia]

ブランドを一緒に育てるために

 では、その相手にどう喜んでほしいのか。これが6の「情緒的価値」になります。そのブランドと関わることで、相手の中に生まれる“喜び”の具体的な姿です。

 別の言い方をすれば、人がモノやサービスにお金を払うという時には、その結果として“どんな喜びに出合えるか”というワクワクした感情があるはずです。“喜び”というのは、あくまでもお客さまの中に情緒として生まれるものです。

 思い出してください。ブランドとは単なる商標でも差別化でもなく、“人を幸せにする存在”であり、ブランディングとは“幸せな関係づくり”でした。ですから、誰かを喜ばせるということについて、具体的に“どう喜んでもらいたいのか”“どのような喜びの声を聞きたいのか”というビジョンや情熱が、自分たち自身になければなりません。

 言葉として単に「喜んでいただく」では、どうしても抽象的な話に終わってしまいます。自分たちはこの仕事を、この商品を通して、どのような喜びをもたらしたいのかを、明確にしておく必要があるのです。そして、その具体的な“喜び”を生み出すためには、ブランドとターゲットとはどのような関係性を築けばいいのか。これが7です。

 私たちが特定の誰かと、親しい幸せな関係を築きたいと思う時も、それは「恋人になりたい」のか「兄弟のような信頼関係になりたい」のか、あるいは「何でも率直に語り合える友達でありたい」のか、はたまた「よきライバルになりたい」のか、関係性というのはさまざまあります。

 これはブランドでも同じなのです。ブランドは、作り出す側とお客さまの側との双方の情熱で一緒に育てていくものです。一緒に育てるためには、どういう関係であることが最善か。どのような関係であれば、末永いおつき合いができるのかということです。

 サンダル履きで気軽に出入りできる関係がいいのか、日々の生活の中で気分をリフレッシュし合えるような関係がいいのか、特別な日に一緒に過ごしたい関係なのか。もしも高級ブランドをめざそうとすれば、人々からちょっと憧れられるような、背伸びをしたくなるような、そういう関係性を作り出さなければなりません。

 ブランドとターゲットとの関係性を、ビジョンとしてあらかじめ描いておくことが、より永く確かな関係づくりのために重要なことなのです。

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