失敗した! そんなときこそ、マーケティングで考えなおそう新商品がヒットする確率は0.3%(2/3 ページ)

» 2016年08月24日 05時30分 公開
[竹林篤実INSIGHT NOW!]
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あるベンチャーのケース

 外国人観光客をターゲットとしたビジネスを考えた起業家がいた。彼はまず、アンケート調査を行った。訪日観光客が、何に一番困っているのか。同じ調査を総務省などでも行っているが、何より不便を訴えているのが、フリーWi-Fi環境のないことだ。

 同じアジアでも韓国や台湾などでは、観光地ならたいていフリーWi-Fiが整備されている。ところが日本では通信キャリアが提供するサービスは契約者以外使えず、行政などが提供するサービスもメールを送ってログインしないと使えない(そのメールを送れないから困っているのだが)といった状態で不便極まりない。

 そして二番目に困っているのが、道案内である。外国語の表示が充実しているとはいえず、道をたずねてもうまく答えてもらえない。「ここにチャンスがある」と、彼は考えた。

 フリーWi-Fiと道案内あるいは通訳を同時に提供できるサービスがあれば、きっと成功する。ここまでは問題はない。だが、その先を詰めきらずに突っ走ってしまった。ベンチャーであり固定費をミニマムに抑えていたから、コスト競争力はある。特別なルートで人的リソースを確保していたから、通訳などのパフォーマンスも高い。つまり4PのうちProductとPriceは競合優位にある。

 けれども、B2Cビジネスのカギとなる、PromotionとPlaceが致命的な弱点となった。つまり、せっかくのサービスも外国人観光客に知ってもらうことができず、使ってもらえなかったのだ。

失敗からの軌道修正

 思うように売り上げは上がらず、抑えているとはいえ経費は毎月出て行く。そこで彼は素早く方向転換を考えた。ここで役に立ったのが、マーケティングのセオリーである。

 彼は、自分のビジネスモデルを見なおしてみた。優秀な翻訳・通訳スタッフ(帰国子女もしくは留学生、それもトップレベルの大学所属)、スタッフのほとんどをバイトで回す低コスト体制といった強みに変わりはなく、外国人客は増え続けている。

 ただ、セグメンテーション、つまり勝負すべきマーケットを間違った。確かに外国人観光客のニーズは顕在化しているが、ニーズが明らかになっているということは、それを狙う大手が参入してくることになる。実際、そうなってもいた。格安のSIMカードを空港で提供するビジネスが立ち上がっていたのだ。

 では、どう考えればよいのか。外国人観光客を巡るマーケットは他にもある。つまり、外国人観光客をターゲットとする企業を支援するB2Bマーケットである。幸いなことに、彼の商圏内には外国人相手にビジネスを展開する企業や店がいくらでもあった。そこに対して、単に質の高い通訳・翻訳サービスを提供するだけではなく、外国人観光客を集客するための総合プロモーション提案のできる企業であることをアピールした。

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