将来的には、選挙結果そのものを操作しようとするサイバー攻撃も考えられなくはない。米大統領戦でも、現在のところ米政府はデジタル投票システムで大規模なハッキングが起きるとは考えていないと主張しているが、2016年の大統領選では有権者10人のうち4人ほどは導入が進む電子投票機を使って投票することになるため、サイバー攻撃のリスクはあるとの指摘もある。
冒頭のNSAに対するハッキングでも指摘した通り、世界的にはハッキングなどサイバー攻撃を行うために国家的にサイバー兵器が開発されている。冒頭の「シャドー・ブローカーズ」にハッキングされたNSA関連とされる組織は、現在分かっているだけで、世界42カ国のさまざまな業界に、監視などのためにハッキングなどで潜入している(この42カ国に日本は含まれないが、日本の場合は侵入しなくとも情報を取れる状況にある、との指摘もある)。こうした「兵器」があれば、コンピュータが使われている場所であれば、サイバー攻撃を行うのは可能である。それがネットワークにつながっていようがいまいが関係ない。
そんな現実を前に、日本も、米民主党に起きていることを対岸の火事とせず、少なくとも自分たちも同じ脅威に直面していることを自覚しておいたほうがよさそうだ。
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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