磯部: でも、なんとかして水泳帽子を普及させたいので、鹿児島から北上することに。特急が停車する駅で降りて、近くにある電話ボックスに駆け込む。問屋の電話番号を調べて、アポをとって営業に回る。そして、ときには小売りも回る。でも、商談はまとまらない。仕方がないので次の駅へ……といった形で、北海道の紋別まで行きました。
土肥: それだけ回れば、少しは売れた?
磯部: いえ、ダメでした。水泳帽子はおむつカバーの素材を使っているので、おむつカバーを頭にかぶることもしました。
土肥: えっ、そこまで!?
磯部: でも、売れませんでした。仕方ないので、再び夜行列車に乗って、鹿児島に向かいました。特急が停車する駅で降りて、近くにある電話ボックスに駆け込んで……そんな生活が3〜4年続きました。でも、売り上げはさっぱり。このままではいけないということで、学校にカタログとサンプルを送ることにしました。でも、切手代がかかるので、まずは生徒数が多い学校から送ることにしました。
土肥: いまでいうDMですね。結果、学校から電話がじゃんじゃんかかってきたとか?
磯部: いえ、まったくありませんでした。なぜか。学校の先生が直接メーカーに連絡をするという商習慣がなかったから。先生は小売りに「水泳帽子ってあるかな?」と言っていたそうですが、小売りは商品のことをよく知らないので「ちょっと、問屋に聞いてみますね」となって、その連絡を受けた問屋は「ちょっと、メーカーに聞いてみますね」といった流れで、やっとこちらに連絡がきました。水泳帽子を発売してから、5年が経ってようやく売れ始めました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング