「小さな大企業」を作り上げた町工場のスゴい人たち

なぜ学校のプールで「水泳帽子」をかぶるのか 知られざる下町企業のチカラ水曜インタビュー劇場(水泳帽子公演)(4/7 ページ)

» 2016年08月31日 06時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

おむつカバーを頭にかぶることも

フットマークの磯部成文会長

磯部: でも、なんとかして水泳帽子を普及させたいので、鹿児島から北上することに。特急が停車する駅で降りて、近くにある電話ボックスに駆け込む。問屋の電話番号を調べて、アポをとって営業に回る。そして、ときには小売りも回る。でも、商談はまとまらない。仕方がないので次の駅へ……といった形で、北海道の紋別まで行きました。

土肥: それだけ回れば、少しは売れた?

磯部: いえ、ダメでした。水泳帽子はおむつカバーの素材を使っているので、おむつカバーを頭にかぶることもしました。

土肥: えっ、そこまで!?

磯部: でも、売れませんでした。仕方ないので、再び夜行列車に乗って、鹿児島に向かいました。特急が停車する駅で降りて、近くにある電話ボックスに駆け込んで……そんな生活が3〜4年続きました。でも、売り上げはさっぱり。このままではいけないということで、学校にカタログとサンプルを送ることにしました。でも、切手代がかかるので、まずは生徒数が多い学校から送ることにしました。

土肥: いまでいうDMですね。結果、学校から電話がじゃんじゃんかかってきたとか?

磯部: いえ、まったくありませんでした。なぜか。学校の先生が直接メーカーに連絡をするという商習慣がなかったから。先生は小売りに「水泳帽子ってあるかな?」と言っていたそうですが、小売りは商品のことをよく知らないので「ちょっと、問屋に聞いてみますね」となって、その連絡を受けた問屋は「ちょっと、メーカーに聞いてみますね」といった流れで、やっとこちらに連絡がきました。水泳帽子を発売してから、5年が経ってようやく売れ始めました。

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