マツダ・アクセラはマイナーチェンジじゃない池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2016年09月05日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]
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 さて、これでタイヤに掛かる実荷重がどの程度変わるのかを計算してみよう。アクセラの1.5リッターガソリンモデルは車両重量1280キロ。前後軸重が分からないので仮に均等だとして、タイヤ1輪あたりは車重の4分の1で320キロになる。320キロの0.005G(0.5%)は1.6キロになる。

ハンドルの切り始めから車両がリニアに反応している。微小舵角と最大舵角付近で効果が顕著なことがグラフから分かる ハンドルの切り始めから車両がリニアに反応している。微小舵角と最大舵角付近で効果が顕著なことがグラフから分かる

 たったそれだけの荷重を足し引きするだけでハンドリングが変わるとはにわかには信じがたい。荷重とグリップの関係が理屈では分かっているつもりの筆者も、実際に体験してみて驚いた。本当にハンドリングが変わる。特に高速道路での直進安定性の向上はちょっと笑ってしまうほどで、レーンキーピングアシスト(自動ハンドル)なんていらないと思うほどだった。これがアクセラにはほぼ全車に装備される。例外は制御システムが違うハイブリッドのみである。

 Gベクタリングコントロールは、車両に元々備わっているセンサ−、コントロールユニット、アクチュエーターを統合して制御するプログラムなので、一台ごとの追加コストはほぼないに等しい。ということは、今後CX-5や、アテンザ、デミオにも全車標準で搭載されていくことはほぼ間違いない。それはすごいことになる。あるいはロードスターにも搭載するのではないか? ファンtoドライブを全く邪魔しないデバイスなのでロードスターのようなクルマについてもおかしくない。

 今回の原稿はマツダの新しい商品改良とは何かがテーマだった。だが、最後にちょっとクルマのことも書こう。試乗してみて、アクセラは相当な実力だと思う。ちなみに本当に中身だけを見る人にはガソリンモデルがお勧めである。ディーゼルとの車両重量差が80キロ。そのほとんどがエンジンだから、鼻先の軽快さは全然違う。すっきりとまとまった良いクルマだ。

 ただし、役物感が何もないと買えないという人もいるだろう。そういう人には1.5のディーゼルが妥当だと思う。静かで十分に速く、燃費も良い。「今回はディーゼルにしたんですか? どうですか?」とも聞いてもらえる。ハンドリングでガソリンモデルに譲るとは言っても、それは比較の話であって、こちらも優秀な部類だ。ではディーゼルの2.2リッターはと言えば、これはエンジンを楽しむクルマだと思う。マツダの2,2ディーゼルは回り方がとても気持ち良い。それは1.5にはない味である。一長一短。全部に都合の良いクルマはない。当たり前の話である。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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