遠いアフリカで、中国が日本にイラついている理由世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)

» 2016年09月15日 06時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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アフリカを舞台に日中の思惑が入り乱れている

 そしてもちろん、安保理改革に向けてアフリカの協力は欠かせない。安保理の常任理事国入りは日本政府の大きな目標だからだ。その上で、アフリカ諸国にも南シナ海を見すえた「航行の自由」に同調してもらえればなお素晴らしい。

 アフリカを舞台に日中の思惑が入り乱れているわけだが、幸いなことに、日本はアフリカで中国よりも断然イメージがいい。日本製品の質の高さは評価され、また支援プロジェクトもそのクオリティの高さが評判である。例えば日本のつくった道路は、中国がつくったモノよりもクオリティが高いと知られている。

 中国と違い、日本は経済プログラムに限らず、教育支援や公衆衛生・健康支援、生活インフラの支援なども行ない、現地人から高く評価されている。また積極的に地元の材料を使って、地元民を雇う。最近アフリカ諸国は「援助」疲れも出ており、経済パートナーとして「大人の扱い」を望んでいる。単なる寄付や投資から、経済パートナーのような扱いを求めているのである。その点も、日本が中国よりも歓迎されている理由になっている。

 これまで日本が培ってきたアフリカ支援と技術力に、TICADのような協力援助が加わることで、日本はアフリカ人の心をさらにつかむことが可能になるだろう。中国の焦りや警戒による口撃は鼻で笑って、日本らしさを貫いた独自路線の協力を続ければ、本当の狙いも達成できるはずだ。それこそが、中国をいら立たせている理由なのである。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。


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