7年ぶり登場したG-SHOCK「FROGMAN」は、どう進化したのかカシオの企画・開発担当者に聞く

2016年6月、7年ぶりにG-SHOCK「FROGMAN」のニューモデルが登場した。これまでのモデルと違ってどのような機能が搭載されているのか。企画・開発に携わったカシオ計算機・時計事業部の担当者に話を聞いた。

» 2016年09月13日 10時00分 公開
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7年ぶり登場したG-SHOCK「FROGMAN」

 多種多様なモデルがラインアップされるG-SHOCKの中でも、どの時代においても常に特別な存在感を発揮してきたのがダイバーズモデルの「FROGMAN」だ。

 FROGMANは「プロフェッショナルのためのタフな道具」として機能性を徹底追求した「Mater of Gシリーズ」の1モデルとして位置付けられていて、G-SHOCKの中でもスペシャルな存在なのだ。

 2016年6月、このFROGMANのニューモデル「GWF-D1000」が登場した。先代モデルの発売が2009年のことだったから、実に7年ぶりのモデルチェンジになる。近年、あらゆる商品のモデルサイクルが短くなり、次から次へと新モデルが登場しては消費されていく中で、7年もの間モデルチェンジがない商品は珍しい存在かもしれない。しかし、G-SHOCKの企画を担当するカシオ計算機 時計事業部の斉藤慎司氏によれば、FROGMANというモデルにとってこれだけ長い商品サイクルは、ごく自然なのだという。

 「Mater of Gシリーズは『プロフェッショナルのための道具』を標榜していますから、一度購入したらできるだけ長く愛用していただきたいと考えています。そのため、機能には関係ないマイナーチェンジを短期間のうちに繰り返すようなことは、Mater of Gシリーズにはふさわしくありません。逆にいえば、機能面で大幅な進化が期待できるタイミングでは、思い切って大胆なモデルチェンジを行います。FROGMANの先代モデルもかなり商品サイクルが長かったのですが、モデルチェンジによって電波ソーラーという大幅な進化を遂げました」

 ということは、今回のニューモデルも電波ソーラーに匹敵するほどのブレークスルーがあったのか。初代モデルと比較しながら、新モデルの“進化”について企画・開発担当者に解説してもらった。

手前が新モデルのGWF-D1000、後方が初代モデルのDW-6300

本格ダイバーズに必須の水深計と方位計を新たに搭載

 「今回のモデルチェンジの最大の目玉は、水深計と方位計を搭載したことです」

 こう語るのは、GWF-D1000の内部モジュールの企画を担当した牛山和人氏。後述するように、GWF-D1000の開発プロジェクトは「FROGMANに水深計と方位計の機能を搭載できないか?」というチャレンジからスタートした。しかしその実現のためには、幾多の困難を乗り越えなければならなかった。

 「水深や方位を測るためのセンサー部品を新たに搭載するわけですから、時計全体として見ると消費電力は多くなりますし、搭載スペースも確保しなくてはなりません。この課題をクリアするためには、センサー部品の省電力化と小型化が必須でした」

 このハードルは、一朝一夕でクリアできるものではなかった。地味な研究開発の取り組みをコツコツと積み重ねる中でセンサーの省電力化・小型化を少しずつ進め、その努力はソーラー時計に搭載可能な気圧・方位・気温センサーモジュール「トリプルセンサー Ver.3」へと結実した。これが実用化され、他モデルへ搭載されていく中で、ようやくFROGMANにも水深や方位、そして水温の計測センサーを搭載できるメドが立ってきたという。

 もちろん、気圧センサーをそのまま水深(水圧)センサーに応用できるわけではなく、水圧に耐えられるだけの耐圧性能の確保も含め、幾多の技術的なハードルをクリアする必要があった。そうした技術的な課題を1つ1つ乗り越えていた結果、最終的には何と10センチメートル単位で水深を計測・表示できる高精度の水深計機能の搭載が実現した。

 加えて方位計も、もともとのセンサー技術では時計を水平に保たないと十分な精度で方位が計測できないという課題があった。

 「水中で視界が悪い場合、時計を水平に保つのが困難なケースもあります。そこで新たに加速度センサーを搭載し、時計の傾きを検出して水平でなくとも方位を測れる機能を実現しました」(牛山氏)

 こうしてさまざまなセンサー部品を新たに搭載したにもかかわらず、時計全体としての消費電力を増やすことなく、かつ時計そのものの大きさも1993年に発売されたFROGMAN初代モデルからさほど変わっていない。その理由は、内部エンジン部を比較してみると一目瞭然だ。初代モデルのエンジン部に比べ、明らかに1つ1つのパーツや電波の受信アンテナ部が小型化されている。例えば方位センサーは、かつては1センチメートル四方だったのが、今では20分の1の体積にまで小型化されている。また水深(水圧)センサーも、かつての気圧センサーと比べ直径が半分になった。

 基板上にプリントされた回路のパターンも、明らかに初代モデルと比べて細かくなっている。FROGMANのデザインコンセプトは初代モデルから大きく変わっていないので、一見しただけではその進化の度合いが分かりにくいかもしれないが、こうして中身を覗いてみるとその大幅な進化の度合いが見て取れる。

内部エンジンを比較すると、初代モデル(右)に比べ、新モデル(左)は1つ1つのパーツが小さくなっている

外装やディスプレイ表示も現場での実用性に徹底的にこだわる

モジュール開発部の牛山和人氏

 中身だけでなく、外装の端々にも進化の形は表れている。基本的なデザインコンセプトは初代モデルから踏襲されているので、遠目に見ると大きな変化はないようにも見えるが、よく見るとサイズが若干大型化しているとともに、全体的な質感が相当アップしていることが分かる。

 例えば初代モデルではあまり目立っていなかった前面のビスは、GWF-D1000では大型化しており、いかにも頑強なつくりをイメージさせる。またバンドをケースにつなぎとめるヒンジも、初代モデルではばね棒が使われていたが、GWF-D1000ではピンでしっかり留められている。

 バンド自体の素材は初代モデルから一貫して樹脂素材が使われているが、GWF-D1000ではこれにカーボンファイバーが加えられており、強度が大幅に増している。しかもこのカーボンファイバー素材は本体ケース側に固定されているため、万が一樹脂部分がちぎれても時計本体が手首から落下しにくいように配慮されている。

 バンドの長さも、もともとFROGMANはウェットスーツやグローブの上から装着することを想定し、通常モデルより長くなっていたが、GWF-D1000ではこれをさらに長くし、重装備でも確実に装着できるようになっている。バンドを留めるための尾錠も、初代モデルと比べるとはるかに頑丈なつくりになっており、穴も一穴から二穴へと増えている。

 ケース前面のガラスには、傷が付きにくいサファイアガラスを採用。通常のガラス素材と比べコストは上がってしまうものの、斉藤氏によれば「水中で酷使すると、岩などにぶつけてガラス面に傷が付くことも多々あります。水難救助の現場などでは、腕時計のガラスに傷が付くのを防ぐために、時計に樹脂カバーを装着することもあるのですが、そのカバー自体にも傷が付いて視認性が落ちてしまいます。ならば、初めから傷が付きにくいサファイアガラスを採用するのが、プロの道具としてふさわしい仕様ではないかと考えました」という。

 さらに、今回初めて搭載した水深計の機能についても、現場での実用性を徹底的に追求している。プロのダイバーが水中で作業を行う際、絶対に把握しておくべき最優先情報が「現在の水深」。そして次に大事なのが「潜水時間」だ。そこで水中作業中には、FROGMANの3つあるディスプレイエリアのうち、メイン表示部分に水深を、2番目の表示部に潜水時間を、そして残り1つの領域に現在時刻や方位、水温などを表示させるディスプレイ仕様とした。

新FROGMANにもイルクジモデルが登場

水難救助隊の現場から得られたフィードバックを開発に反映

商品企画部の斉藤慎司氏

 このように、水中で作業をする際の実用性に徹底的にこだわった背景には、水難救助隊とのコラボレーションがあった。FROGMANの企画・開発チームは、2013年より水難救助隊の現場の隊員にヒアリングを行い、水中作業のプロフェッショナルたちがダイバーズウォッチに求める機能について検討を重ねてきた。そこで、プロフェッショナルから最も要望が強かったのが水深計および方位計の機能だったという。

 「当時のFROGMANには水深計の機能がなかったので、『これでは私たちの仕事の現場では使えない』とはっきり言われました。これにはかなりショックを受けました。そこで方位計の機能とあわせ、何とかFROGMANに水深計を搭載してプロフェッショナルのための道具にふさわしい製品にしようと思い立ち、新モデルの開発プロジェクトを立ち上げました」(牛山氏)

 また、こうして水難救助隊とのコラボレーションを進める上では、自分たちもそれ相応の専門知識を身に付ける必要があると考え、企画・開発チーム全員で潜水士の国家資格を取得した。その過程で得られた専門知識は、実際にその後GWF-D1000を開発していく上で大いに役立ったという。

 こうして、こだわりにこだわり抜いてでき上がったFROGMANのニューモデルは、実際にプロフェッショナルの使用に十分耐え得る製品に仕上がった。水難救助隊の現場では現在、GWF-D1000を装着して日々の水中作業が行われており、その中から出てきた現場の意見は日々開発チームにフィードバックされているという。

FROGMANのニューモデルはこだわりにこだわり抜いてでき上がった

 斉藤氏は、GWF-D1000を身に付けることで「たとえ普段はダイビングや水中作業に縁がない方であっても、GWF-D1000の開発の背景にあるプロダイバーたちのマインドや世界感に常に触れていることができます」と、その所有の喜びを表現する。

 「例えばGWF-D1000の長いバンドは、普段手首に直接装着する分には長さが余って邪魔になるかもしれません。でも、この余った長さがいかにも本格派のダイバーズっぽくて、リアルな世界感を感じさせてくれるのです。GWF-D1000を通してぜひ多くの方に、こうしたロマンを感じていただけるとうれしいですね」

 旧モデルと比べると若干価格が上がった新FROGMANだが、その「本気度」は大幅にアップしている。それを考えれば、むしろそのコストパフォーマンスは歴代モデルの中で最も良いといえそうだ。

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提供:カシオ計算機株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2016年9月30日

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