それでも「カップヌードル謎肉祭」販売休止を「品薄商法」だと疑ってしまう理由スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2016年09月20日 07時53分 公開
[窪田順生ITmedia]

「謎肉祭」は見通しが立てやすい!?

 日清はJ-CASTニュースの取材に対して、「実数は控えさせていただきたいのですが、『謎肉祭』は通常のカップヌードルビッグの月間販売数量の1.5倍を用意していました」と答えている。

 そう聞くと、「あの定番商品の1.5倍でもダメならしょうがない」と納得するかもしれないが、最新の日経POS情報・売れ筋商品ランキングを見ても、「カップヌードルビッグ」は20位圏内にも入っていない。これが1年半をかけた「謎肉」プロモーションや、SNSでの大盛り上がりに見合う計画だったのかというと、どうしても首を傾げてしまう。

 実際に日清はこの4月、「謎肉祭」と比べてはるかに予測が難しい新商品を、在庫切れを引き起こすことなく「ヒット商品」として成功させている。

 それは、すっぽんとフカヒレという高級食材を用いた「カップヌードルリッチ」だ。

カップヌードル初のプレミアムタイプ「カップヌードルリッチ」(出典:日清)

 「ああ、矢口真里のCM中止騒動後にバカ売れして炎上商法疑惑がでたやつね」と記憶に新しい方も多いかもしれないが、実はこの商品は、日清にとってかなりの挑戦だった。

 NHKニュースで、『国内トップシェアのカップめん 45年で初の高価格商品 高級食材を使用』(2016年3月28日)なんて取り上げられたことからも分かるように、『量を変えずに味にこだわって価格を引き上げた高価格帯の商品は、今回が初』だったからだ。

 では、どれだけ価格を引き上げたのかというと「50円」。消費者の感覚では「それっぽっち?」と拍子抜けするが、小売業者からすればこの50円はかなりでかい。「そんな高いカップヌードル、本当に売れるの?」と懐疑的な声もかなりあがっていたほどだ。

 だが、ふたを開ければ、発売1カ月で600万食突破。矢口騒動もあってネットニュースやSNSで話題が拡散し、当初の販売計画を大きく上回ったのだ。

 口で言うと簡単に聞こえるが、これはかなり難しい。『土の味がする』と発売前からネットで話題になった「レモンジーナ」のように、斬新な味、斬新なコンセプトの新商品というのは、販売予測が立てずらい。事実、日清でも過去に供給が間にあわず販売休止になっているのは、2014年の「トムヤムクンヌードル」や、2010年の「カップヌードルごはん」のように新たな価値を提示する新商品だ。

 いや、「謎肉」だって十分斬新じゃないか、という声が聞こえてきそうだが、冷静に考えると、ダイスミンチが10倍になっているだけで、価格も通常の「カップヌードルビッグ」と同じ205円(税別)。つまり、「謎肉祭」という商品名はかなり斬新だが、実態としては定番商品をベースとした「お値段据え置き増量商品」に過ぎない。これは裏を返せば、「不確定」な要素が圧倒的に少なく、見通しが立てやすい商品ということでもある。

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