アイリスオーヤマはなぜ「家電事業」に参入し、「結果」を出してきたのか水曜インタビュー劇場(家電公演)(5/7 ページ)

» 2016年09月21日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

過剰なスペックは不要では?

軽量化の開発に成功した

土肥: 掃除機を開発してみて、何か気付いたことってありますか?

小林: 大手の家電メーカーは「吸込仕事率」(掃除機がゴミやホコリを吸い込む能力をワットで示したもの)をアップするためにどうすればいいのか、その競争をしているなあと感じました。どんどん吸い込むチカラを上げていくわけですが、家を掃除する際、そこまでのチカラが必要なのか、疑問を感じたんですよね。

 吸引力のある掃除機を使っていて、このような経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。「カーペットなどを吸い込んでしまって、肝心のゴミを吸い取るのに時間がかかってしまった」といったことが。吸い込むチカラを上げていくのではなく、お客さんにとって大切なことは何かを考えました。いろいろ検討した結果、「過剰なスペックは不要」というアイデアが固まってきました。過剰なスペックをそぎ落としていくと、そこそこの値段でそこそこの商品をつくることができました。

土肥: テレビのリモコンのような話ですね。リモコンが世に出てきたとき、構造はとてもシンプルでした。電源とチャンネルだけといった感じで。しかし、他社との差別化を図るために、各社は「あれも付けて、これも付けて」となって、ボタンだらけのリモコンになってしまいました。結果、消費者から「こんな機能、誰が使うの?」「どうやって使うの?」といった不満の声が出てきました。いまは逆に、「こんな機能はいらないよね」となって、シンプルなリモコンが増えてきました。

 ただ、気になったことがひとつ。「価格が安い」ことは消費者にとってうれしいのですが、中には「安かろう悪かろう」と受け止める人もいると思うんですよ。そのへんの不安はなかったですか?

小林: 「安物扱いされるのでは」という不安がありました。ですが、安ければいいという話ではなくて、消費者が課題を感じていて、それを解決するモノをつくらなければいけません。そして、それを多くの人が購入できる価格でなければいけません。

土肥: スティッククリーナーの価格をECサイトで調べると、1万5000円くらいですね(9月中旬)。

村越: 新商品を開発する前に、企画を提案しなければいけません。その会議には経営陣も参加していて、社長が印鑑を押せば、開発に着手できるといった流れ。もし、その会議で「スティッククリーナーを3万円で発売したい」と言っても、経営陣から「高い!」と言われるでしょう。この価格だったら買ってもいいかな……と思える“値ごろ感”を重視しているんです。

土肥: でも値ごろ感って人によって違いますよね。社長と平社員では、収入が違うわけですし。

家電部門の研究開発拠点「大阪R&Dセンター」

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