この話は、ファストフード店が店舗を出店するケースと比較すればよりハッキリするだろう。例えば、ファストフード・チェーンが新規出店する場合に、かなりのコストをかけて人が集まる場所を確保する必要がある。便利な場所に出店すれば多くの顧客を獲得できる一方、不動産の賃借コストは膨れあがってしまう。
つまり、出店には費用対効果というものがあり、自由に競争させても無制限な過当競争にはならずに済む。つまりマーケットメカニズムが働き、適正な価格で適正なサービスを提供できる事業者しか残らないのだ。
ところがタクシーはそうではない。クルマさえ用意できれば、あとは税金で作られた道路を使ってビジネスができてしまう。しかもタクシーは移動するものなので、立地などの制約を受けない。どの企業も条件は同じである。つまり参入が容易で、しかも差別化要因がほとんど存在しないのがタクシーというビジネスだったのである。
このためタクシー業界は過当競争に陥りやすく、こうした事態を防ぐため政府は規制をかけ、認可された事業者しかタクシーの業務を実施できないようにしてきた。だが政府が規制をかけるとなると、参入できるかどうかは、全て政治的な力学関係で決まってしまい、利用者のサービス向上は二の次となる。タクシーの接客レベルが総じて低かったのは、タクシーが規制産業だったからである。
だがシェアリングエコノミーが台頭してくると状況はまるで変わってくる。Uber(ウーバー)のような配車サービスの場合、利用者はタクシーを選ぶという感覚を持つようになる。ITのインフラを使えば、自分が乗ったタクシーをレビューし、その結果を別の利用者が参照することは当たり前となる。
タクシーは流しで拾い、全てを偶然に任せるという存在から、主体的に事業者を選ぶというやり方に変わってくるのだ。法制度の問題は残っているが、一般の個人が自分の車をタクシー代わりに提供するライドシェアとなれば、その傾向はさらに顕著になってくるだろう。
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