マツダの通信簿池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)

» 2016年09月26日 06時15分 公開
[池田直渡ITmedia]

 例えば、トヨタを見てみよう。2000年以降のトヨタは営業利益率を順調に伸ばし、2004年には売上高16兆7000億円に対して9.6%を記録した。ところが、リーマンショックの煽りを受けた2012年には営業利益率が1.9%に急落している。では売り上げはと言えば18兆6000億円とむしろ増えているわけだ。営業利益を比べると一目瞭然である。2004年は1兆6669億円。対して2012年は3556億円と利益が5分の1に激減している。ちなみにトヨタはリーマンショックを教訓に大改革を断行し、2015年には売上高28兆4000億円と驚異的な躍進を見せ、さらに利益率を2桁に乗せ、この規模の製造業としては“非常識”とも言える10.1%を記録している。

 トヨタというモンスターを前にすると、マツダの数字は地味に見える。営業利益率は前年と同じ6.7%である。2014年は6.8%だったのでこの2年でわずかにダウンしていると言えるが、誤差の範囲内と見るのが妥当だろう。その前に遡ってみれば、2013年の利益率はわずか2.4%。2012年に至ってはマイナス1.9%だったことから考えれば、利益体質は大幅に改善されたと見るのが妥当だ。

 2017年3月からはこの構造改革はステージ2へと進み「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」の両立を進めていくという。環境と安全は社会の要請であり、企業市民として世界に果たすべき役割である。しかしながら、そのために全てを犠牲にせず「走る歓び」と共存させる構造改革を進めていくのがマツダの狙いである。

主要商品ラインアップ 主要商品ラインアップ

 義務を果たしながら、自我を捨てない。多分言葉で定義をすればそういうことになる。義務を果たすことだけを考えればクルマは退屈になる。だからこそ個人としての楽しみを失わないようにする。そういう難しい問題を解決する基盤技術としてSKYACTIVがある、とマツダでは説明しているのだ。

 2019年3月期はこの構造改革の最終年となる。ここは明確な数値目標が掲げられており、グローバル販売台数165万台、営業利益率7%以上、自己資本比率45%以上、配当性向20%である。マツダは「2%の人に喜ばれるクルマ作り」を標榜(ひょうぼう)してきたが、グローバルな新車の販売台数が約1億台という状況で考えれば、目標の165万台という台数はかなり良いところまでその理想に近づいてきたとも言える。

 もう少し詳細に見てみよう。2016年3月決算で確定している数字は、グローバル販売台数153万4000台、営業利益率6.7%以上、自己資本比率37.4%以上である。ちなみに1株あたりの当期純利益は224.85円で、中間配当15円、期末配当15円の合わせて30円なので、配当性向は13.34%になるはずである。

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