続発するハッキング事件が暗示する本当の「脅威」とは世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2016年09月29日 06時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

民間企業から「盗まれた」もの

 まず「バハマリークス」だが、このケースはともすればデータ搾取行為やハッキング犯罪を正当化しかねないものである。少し詳しく見てみたい。

 「バハマリークス」の130万におよぶファイルは、もともとドイツの南ドイツ新聞が入手したものだ。それが国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に提供され、ICIJと連携している世界各国のメディア関係者が協力して内容を暴露している。2016年4月に公表された「パナマ文書」と同じパターンである。

 「パナマ文書」は当時、どう流出したのか。パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」が、何者かによるハッキング被害に遭って大量のデータが盗まれた。タックスヘイブンでペーパーカンパニーの設立などに協力をしていた同事務所は、「ハッキングは欧州から行われたという証拠を持っている」と主張している。

 ここではっきりしたいのは、情報が「流出」したのではなく、ハッキングという犯罪行為によって民間企業から「盗まれた」ものだということだ。言うまでもないが、何者かが意図的に他人のPCやネットワークに入り、情報を獲得する行為は犯罪である。他人の家に侵入して物を盗むコソ泥と同じである。

 今回の「バハマリークス」では、ICIJは情報の入手経路について、詳しく述べていない。だがおそらく、今分かっているデータの入手経路から見て、「パナマ文書」と同じような形で「盗まれた」情報ではないだろうかと考えられ、

事実、知人の米サイバーセキュリティ関係者もハッキングを指摘していた。そうでなかったとしても、誰かが盗み出したのは確かである。つまり、犯罪行為で盗まれた情報の可能性が指摘されている。

 そもそも今回の「バハマリークス」は、情報を公表する大義がよく分からない。盗まれた情報だったとしたら、なおさらである。

「バハマリークス」は犯罪行為で盗まれた情報の可能性が高い(写真はイメージです)

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