内定ブルーになったとき――キャリアカウンセリングで話すこと(3/3 ページ)

» 2016年09月29日 05時30分 公開
[増沢隆太INSIGHT NOW!]
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「夢はかなう」キラキラフレーズに踊る

 ネット上には「夢を諦めない」「やらずの後悔より、やって後悔」的なキラキラフレーズを唱える人たちが一定数います。ブラック職場やいかがわしい商法でもこうしたキラキラフレーズは大人気です。

 貧困学生が、アニメーターや芸能人、司書やら学芸員など経済的にも厳しい現実にあるキャリアを選ぶことは限りなくリスキーであり、生活破たんの可能性が高いといえます。しかしそうした結論を諭すのではなく、まずその選びたいキャリアがどういうものなのかを自分の言葉で語ってもらうのは非常に重要です。内定ブルーの学生も、今内定先に感じる不安と不満が何であり、どういった進路選択ならそれがかなえられるのかを丁寧に傾聴する必要があります。

 実は新卒就活学生どころか、再就職支援の40代50代の人のキャリアカウンセリングでも同じようなアプローチをすることが多いのです。現在の日本において、中高年の選択肢は極端に少なく、再就職が必要な状態になったり追い込まれた方の選択肢はさらにその何十倍も狭いものになっています。そんな方に現実を通告しても、まず心底から受け入れられることはありません。表面的にはその「答」を受け入れたように反応し、恐らく二度と面談には来られなくなるでしょう。

気付きは自らの中で起こる

 内定ブルーの学生も全く同じです。その選択が危険でない限り、個人の意思は尊重されるべきです。しかしビジネス的な視点、キャリア専門家の視点で見て、大いに危険性のある選択を実は学生が希望している場合、ぜひともそのキャリアについて詳しく説明してもらいましょう。今ある内定を捨ててまで選びたいその選択ですから、きっちりとした理解をしているはずです。その選択をしたものの、キャリアに行きづまる可能性やそんなときの対策についても聞いてみましょう。

 明確なリスク感覚を持ち、現実的想定の上での選択であれば、たとえそれが無謀そうに見えても、最後は自分自身の人生です。それは自己責任で見守るしかないと思います。しかしこれまで何千人ものキャリアカウンセリングを行った中で、そこまでのリスク想定や選択肢の検証をしている学生はもちろん、中高年の方ですらほぼ皆無でした。今目の前にある何となく不安な気持ちや、二者択一の反対の選択肢への後ろ髪をひかれる思いにとらわれているだけの方が圧倒的です。感情としては少しも間違っていません。それを一切否定することなく、くわしく聞き出し、本人はそれを自分の言葉で語ることにより、感情と考えの整理ができます。

内定ブルーへの対処で何より重要なことは、正解の提示ではなく、そうした自分の思いを徹底的に聞き出すこと、その結果としてカウンセリング効果により、自分自身で決断ができるようになることだといえます。北風と太陽を地で行く対応が、きっと効果があることでしょう。(増沢隆太)

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