「豊洲新市場はカジノにすればコスト削減になる」は本当かスピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2016年10月04日 07時50分 公開
[窪田順生ITmedia]

「上客」をつかまえるために「IR」は有効な手段

 なぜ日本では国際会議が開かれないのか。岩屋氏は「施設の規模」が見劣りしている可能性を指摘している。

 例えば、都市の国際会議開催では世界7位にいるシンガポールには、1万1000人を収容する国際会議場があるのだが、「東京ビッグサイト」の収容人数は1000人。「パシフィコ横浜」でも5000人程度しかない。他国と比較してもスケールの小さは際立っている。

 『マカオ、上海、ソウルなどと比較しても同様のことが言えます。東京ビッグサイトの規模は、2012年の世界ランキングでは68位(日本展示会協会)でしかありません。アジアだけではなく世界中で大規模な展示場や会議場が続々とつくられていっている中で、このポジションはさらに低下していくと予想されます』(「カジノ法」の真意)

 じゃあ、「上客」をつかまえるために他国並の施設をつくればいいと思うかもしれないが、五輪施設でこれだけ揉(も)めている中で、公費を投入して巨大なハコモノなどつくれるわけがない。そういうときこそ、民間の活力だと軽く言う人もいるが、日本中でハコモノが赤字経営をしている中で、「東京ビッグサイト」の10倍規模のプロジェクトに手を挙げる酔狂な企業はない。

 そこで、「IR」だ。

 IRは全施設面積の5%程度であるカジノフロアの収益によって、施設全体の運営費をサポートできる。だから、IRを導入している国では、日本国内ではありえないような巨大施設をつくりだすことができるのだ。事実、先ほど紹介したシンガポールの1万1000人規模の国際会議場があるのは、マリーナ ベイ サンズ。日本人観光客も多く訪れる屋上に舟が乗ったような形の巨大IRだ。

 つまり、「公費を投入した巨大ハコモノ」をつくることができなくなった日本において、諸外国との観光誘致競争で勝ち抜いて「上客」をつかまえるためには、「IR」は非常に有効な手段なのだ。

 それこそが、岩屋氏がIRのことを「観光産業のエンジン」と呼ぶ所以(ゆえん)だ。

マリーナ ベイ サンズには1万1000人規模の国際会議場がある

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