日本の鉄道はどうだろうか。ほとんどの大都市は沿岸にあり、大量輸送は船でまかなえる。そうなると鉄道のメリットは「船より速く」とスピード重視に傾倒する。スピードの需要は貨物より旅客のほうが大きいから、鉄道は旅客列車を優先し、速度を重視する。速度を維持するために定時運行にこだわる。その究極の形が新幹線だ。東海道新幹線の誕生に欧米が驚いた理由は、「鉄道に物量ではなく速度を求める」という発想そのものが斬新だったからではないか。
しかし、欧米は新幹線によって高速鉄道の可能性に気付いた。大量輸送も重要だが速度も必要。速度を上げるために定時性が重要。世界の鉄道は新たな段階に入った。
日本はどうか。そもそも大量輸送という概念が欠落していた。国鉄型コンテナは小口輸送に根ざした12フィート形が普及して今に至る。これが大量輸送から乗り遅れる理由となった。ISOコンテナや国内10トントラック相当の31フィートコンテナの対応は始まったばかりだ。
ロシアの線路と接続すれば、日本の鉄道関係者は、大陸の鉄道が持つ大量輸送という役割を実感するだろう。ISOコンテナを標準とした施設の見直し、新幹線貨物輸送の実現、オフレールステーションの鉄道への復帰もあるかもしれない。鉄道貨物の重要性が認識されると、今まで旅客列車だけで赤字だった路線にも貨物列車が走り始める。そのときにようやく「ローカル線を残して良かった」「廃止して後悔した」という声が上がるはずだ。
日本国内では改軌も鉄道貨物モーダルシフトも進まないけれど、日本は外圧を受けた改革は得意だ。北からの「黒船」に飲み込まれないように、国は物流政策に確固たる信念とリーダーシップを発揮してほしい。
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