なぜ東京で“串カツ居酒屋”が流行っているのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/3 ページ)

» 2016年10月27日 06時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

当時の東京にはなかった、串かつ屋に目を付ける

 フォーシーズ料飲業態本部、網野由也本部長によると、「大阪の名物で、お好み焼きやたこ焼きの店は東京にたくさんあるけれど、串かつの店はなぜか見ない。串かつもやってみたら、流行るのではないか」という同社の浅野幸子社長の疑問が始まりだったという。

 同社は、「ピザーラ」のほかにも、宅配すし「柿家鮨」、グルメハンバーガーレストラン「クア・アイナ」、讃岐うどん「宮武讃岐うどん」、ピザとパスタの専門店「トゥ・ザ・ハーブズ」――など多くのブランドを持つ大手外食企業。グループ全体で50以上の業態を持ち、1000店以上を経営している。

 それほどの外食のプロ集団でもなかなか見つからないのは、全国にFC展開していける商売のタネ。食い倒れで知られる大阪は庶民的な料理の宝庫で、東京で粉もんは普及してきているが、串かつの店は、当時広まっていなかった。それならば、串かつにチャンスがあるだろうと、浅野社長は考えたのだ。今、「串かつ でんがな」はFCを推進し、店舗の3割がFC店となっている。

 東京にも顧客がストップと言うまで串刺しになった多種多様な揚げ物がエンドレスで出てくる、コース料理の高級な串揚げ専門店は人気があった。また、天ぷら、とんかつのような揚物の文化も、東京には根付いていた。デフレ時代の外食の商材として、安価な串物としては、焼鳥に続くものとして、もつのホルモン焼、豚肉の焼とんがブレイク。次は牛肉となったときに、単価の高い牛肉をメインとした串物を1本100円で提供する串かつがぴったりとはまった面もあるだろう。

photo 「串かつ でんがな」

 また、フォーシーズで、路面向けの新業態が求められていた社内の事情もあった。

 「大阪の串かつは観光客の行く店で、地元の人は食べていないという説があるのですが、調べてみると、新世界でもジャンジャン横丁は違っていました。サラリーマンの常連客で賑わっているのです。そこでジャンジャン横丁にある串かつ店をベンチマークして業態開発にあたりました。さらに、東京で串かつを提供していたお店の3分の2に当たる、40店を食べ歩いて徹底的にリサーチしました」(網野氏)。

 ソースは、東京の串かつ店は中濃ソースや砂糖を混ぜているところが多いが、「串かつ でんがな」では、関西のメーカーと共同開発を行い、大阪流のウスターソース100%で製造。衣は油を吸わないように特殊加工したキメの細かいパン粉を使い、山芋をブレンドして何本でも食べられるソフトな食感を実現している。油は日本では入手困難なオランダ産の高級ラードを使って、ふんわりもちっと健康的なイメージで仕上げている。

 さらにこだわったのはジャンジャン横丁では牛串と並ぶ人気メニュー、どて焼き。どて焼きなくして大阪では串かつ専門店を名乗れないほどの重要なメニューだ。が、調理技術が未熟だと焦がして苦くなってしまう。そこでアルバイトでも安定した品質で提供できるように、自動どて焼き調理マシンをオリジナルで開発したという。

photo「 串かつ でんがな」のどて焼き

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